当事者は大真面目だが、報道に接した側はなんとなくクスッと笑ってしまう。そんなトラブルが大阪で起きた。岸和田市の公立中学の芝を「部活の妨げになる」ということで、野球部とソフトボール部の保護者が剥がしてしまった事件である。
報道に周辺事情を織り交ぜて、このトラブルをおさらいしておこう。
大阪府では、子どもが屋外で遊ぶ機会を増やす効果を見込んで校庭の芝生化を推進。手を上げた学校には2004年度から補助金を出すようになった。現在では府内の小中高約160校が校庭の芝生化に取り組んでいるという。
今回トラブルが起きた岸和田市の中学校もそのひとつで昨年度、府の補助金300万円に地元住民の寄付などをプラスした約800万円で芝生化を実施。苗の育成や芝の植えつけを在校生や地域住民が行った。
なお、校庭の芝生化は大阪府に限らず、各地で行われるようになっている。芝生になればケガをしにくくなる、太陽の熱が芝に吸収されて温度が軽減される、土ぼこりが舞わなくなる、地域住民の憩いの場としても使えるようになるといった効果も期待できるからだ。
とはいえ、芝がきれいに生え揃うには時間がかかる。この中学校でもデコボコの状態が続いてきたはずだ。その影響を受けるのは校庭を練習に使う部活である。とくに野球部とソフトボール部はイレギュラーバウンドが続出して練習にならなかったにちがいない。
そこで両部の保護者は、練習で使う部分の芝生を剥がして欲しいと学校に要請。だが、補助金や寄付で行っているうえ、多くの人の協力も得ている事業であることから学校側はそれを拒否。土を入れて平らにすることで一応合意した。
だが、それでも問題は改善されなかったのか、12月に入って両部の保護者は予告もなく重機を持ちこみ、練習で使う場所(校庭の約3分の1)の芝を剥ぎ取ってしまった。それがトラブルとして報じられたというわけだ。