イチローの英語スピーチが「中学レベル+α」でも世界から絶賛されたワケ【専門家が解説】Photo:Jim McIsaac /gettyimages

イチロー氏が米野球殿堂入りの表彰式で披露した英語スピーチが、絶賛されています。英語が特段うまいわけではなく、わりとクールな印象のイチロー氏が、聴衆を爆笑の渦に巻き込んだのは、なぜ?成功したポイントを、英語コーチングスクール経営の専門家が解説します。(トライズ 三木雄信)

なぜイチロー氏の英語スピーチが
アメリカ人を爆笑&感動させのか

 イチロー氏が日本人初となる米野球殿堂入りを果たしました。オリックス・ブルーウェーブ(1992~2000年)からメジャーリーグに挑戦し、シアトル・マリナーズ(2001~2012年、2018~2019年)、ニューヨーク・ヤンキース(2012~2014年)、マイアミ・マーリンズ(2015~2017年)で大活躍したイチロー氏。日米双方の球界にその名を刻みました。

 表彰式典では、イチロー氏が英語によるスピーチを披露。現役引退時には伝えきれなかったファンへの感謝や、異国で戦い続けた20年超の思いが詰まった内容が、メディアやSNSで賞賛され話題です。英語コーチングスクールを経営する筆者が見ても大成功だったと思います。何が成功のポイントだったのか、スピーチの分析をしてみましょう。

 まず、スピーチの中で特に印象的な部分を抜き出して、文字起こしします。

Today, I’m feeling something I thought I would never know again.
今日、私はもう二度と味わうことはないと思っていた感情に包まれています。

For the third time, I am a rookie. First in 1992, after the Orix BlueWave drafted me out of high school. Then, in 2001, I became rookie again at 27, when the Seattle Mariners signed me.
これで3度目のルーキーです。最初は1992年、高校を卒業してオリックス・ブルーウェーブに指名されたとき。そして2001年、27歳でシアトル・マリナーズと契約し、再びルーキーとなりました。(会場で大きな歓声)

I realize I’m a rookie again. Thank you for welcoming me so warmly into your great team. I hope I can uphold the value of the Hall of Fame, but please, I’m 51 years old now. So easy on the hazing.
(殿堂入り先輩プレイヤーたちを見ながら)またしても、自分がルーキーであることを実感しています。この素晴らしいチームに温かく迎えてくださり、ありがとうございます。殿堂の価値を損なわぬよう努めたいと思っていますが、どうかご容赦を。私はもう51歳なのですから。新人いびりは、ほどほどにお願いします。(会場で大きな笑いが起きる)

People often measure me by the records. 3000 hits, 10 Gold Gloves, 10 seasons of 200 hits. Not bad, huh? But the truth is without baseball, you would say this guy is such a dumbass.
人はよく、記録で私を評価します。3000本安打、ゴールドグラブ賞10回、10シーズン連続で200本安打。悪くないでしょう?しかし実際は、野球がなければ私は、こいつはただのアホだなと言われたでしょう。(大きな笑い)

3000 hits or 262 hits in one season are achievements recognized by the writers. Well, all but one of you.
3000本安打やシーズン262安打は、記者の皆さんに評価された記録です。ええ、あなた方のうち1人を除いて、ですが。(大きな笑い)

I have been in love with Seattle and the Mariners ever since. Thank you, Seattle.
それ以来、私はシアトルとマリナーズを愛し続けてきました。ありがとう、シアトル。(会場から大歓声と日本語で「ありがとう」の声が聞こえる)

Thank you to the New York Yankees. I know you guys are really here today for CC.
ニューヨーク・ヤンキースの皆さん、ありがとうございます。今日ここに来ているのは、ほんとはCC(イチロー氏と同じタイミングで殿堂入りしたCC・サバシア氏。2人はメジャーデビューも同じ年で、ヤンキース時代はチームメート)のためだってことは分かっていますよ。(大きな笑い)

To Marlins, honestly, when you guys called to offer me a contract for 2015, I had never heard of your team.
マーリンズの皆さん、正直に言いますと、2015年に契約のお話をいただいたとき、私はあなた方のチームのことを聞いたことがありませんでした。(大きな笑い)

The person who supported me the most was my wife, Yumiko.We did it in American way by eating hot dogs.
私を最も支えてくれたのは、妻の由美子でした。私たちはホットドッグを食べるというアメリカ流のやり方で祝いました。(大歓声と拍手)

 19分間の長いスピーチでしたが、イチロー氏は歓声と爆笑をかっさらい、会場は大いに盛り上がりました。なぜでしょうか?大成功の理由は複数あります。