今年、大きな問題となりそうなのがインターネット上のプライバシー保護だ。コンピュータはもとより、スマートフォン、タブレットなどがユビキタスに行き渡り、ソーシャルネットワーク(SNS)の利用もますます増える。
ユーザーがインターネット上で行うウェブブラウジング、SNSでつぶやく私的な出来事、インターネット接続されたテレビで見る番組や映画。それらすべてが、今や専門の技術によって細部に渡りトラッキングされ、分析され、ユーザーのプロファイルに刻々と加えられている。
そのプロファイルは貴重な情報商品として売買され、ブローカーからブローカーの手に渡り、広告会社やマーケティング会社がターゲット広告を打つ際の大切なツールとなっている。その結果、ユーザーのプロファイルは本人の知らぬ間に、ありとあらゆるところに散在している状況にある。
ユーザーがいくら自分でプライバシー情報を保護していると思っていても、プロの技には負けてしまう。ユーザーがブラウザーでクッキー無効の設定を行っても、それを覆す技術もあれば、インターネット上の「行動パターン」からユーザーの特徴を割り出す技術もある。
自分がつぶやかなくても、知人の誰かがあなたのことをつぶやいているかもしれない。インターネット上のプライバシー保護は、以前とは比べものにならないくらい難易度の高いものになっているのだ。
さて、そんな状況に対応するために出てきたのが、ネット上の自分の居場所をわからなくする新種のプライバシー保護技術である。特に注目されているのが、NPOによって運営されている「トーア(Tor)」という技術だ。
トーアの技術は、一般的に匿名化ネットワークと呼ばれる。あるユーザーがコンピュータを用いてメールを送信したり、ブラウザーでウェブサイトにアクセスしたりする際に露出してしまうプライバシー情報を、送信のルートを暗号化して複雑にすることで第三者にはわからなくしてしまうものだ。