
「○○さんは、どういう理由で退職されたのですか?」「××さんって、どういう人ですか?」退職した社員について、その人物を採用しようとしている企業から問い合わせが来ることがある。過去に在籍していた社員の話を、どこまで話していいものなのか。また逆に、転職者を採用しようとするときに、どんな人物なのかを前職の会社に聞いていいものなのか?その判断基準と、気をつけるべきポイントとは。(社会保険労務士 木村政美)
<甲社概要>
企業向けIT機器の販売とメンテナンスを扱う会社で、従業員数は200人。
<登場人物>
A:35歳。甲社の営業課長(2年前に営業主任から昇進した)でCの元上司
B:乙社の人事部長
C:30歳。Aの部下だったが、今年3月末付で退職した
D:甲社の人事・総務部長
E:甲社の顧問社労士
退職した社員について、問い合わせの電話がかかってきた
5月中旬のある日。朝礼後、A課長の内線が鳴った。
「もしもし、Aです」
「こちらは、乙社人事部のBと申します」
「お世話になっております。どのようなご用件でしょうか?」
「御社を3月末に退職されたCさんの元上司だった方とお話がしたいのですが」
「私が元上司です」
「それは失礼しました。実はCさんが、弊社の採用試験を受け、営業職での入社を希望されています。その件でCさんの仕事ぶりについてお伺いしたいと思い、お電話させていただきました」
「そうですか。Cさんは優秀な営業マンで、成績は毎月課内のトップでしたよ」
「じゃあきっと、会社内でも高評価だったんですね」
「そうですね」
「では、退職されたわけをお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「えっ?」