
証券口座の乗っ取り被害が話題になるなど、ネットを手放せない現代社会ではサイバー犯罪は常に個人を脅かしている。最低限の身の守り方は覚えたいし、現状も整理しておきたい。中公新書ラクレ「匿名犯罪者」(櫻井裕一氏との共著)を今春刊行した、サイバーセキュリティ専門家の高野聖玄氏(STeam Research & Consultin取締役COO)に話を聞いた。(構成・聞き手/ライター 富岡悠希)
国家ぐるみのサイバー犯罪に
個人で対策を講じる?
――著名個人投資家のテスタさんが5月、セキュリティ対策を取っていたものの証券口座の乗っ取り被害にあったことを明らかにしています。サイバー犯罪に対して、ネットユーザーは、どう身構えるべきなのでしょうか?
少し大きい構図から話します。実は個人や会社にサイバー犯罪には気を付けましょうと言っていた時代から、ここ数年で国の問題と捉えるフェーズに変わってきているのです。
日本だと北朝鮮、ロシア、中国という国家関与型のサイバー犯罪が増えています。そうなると、個人や会社は自分たちのネット環境を自分たちで守ることが難しくなります。相手は圧倒的な専門性と物量を持っていますから。

お話に出た証券口座の問題だと、そもそも多要素認証が必須でなかった証券会社もあったと聞きます。そうなると個人が対応できることは限定されていて、パスワードを使い回ししないとか、変なメッセージのURLを踏まないとかしかありません。
ネットに接する時間は長く、利用頻度も高まっています。そんな中で、一回もセキュリティーリスクを犯すミスをしないのは難しいでしょう。
サイバー犯罪を考えるうえでは、国民を守るため国が予算と人員を割いて、対策する重要性が増していることを、まず指摘しておきたいです。