2010年はいろいろな出来事のあった年だった。北朝鮮攻撃による韓国軍艦の沈没(3月)、中国漁船の日本の監視艇への体当たり(9月)、ロシア大統領の国後島訪問(11月)、北朝鮮による韓国延坪島への軍事攻撃(11月)。周辺の海は波が高かった。こんなに安全保障を意識した年はなかった。だが日本は何も決められなかった。

 普天間基地の移転問題は今年も移転先が決まらなかった。米国政府との約束を守れないまま、5年続けて年を越す。先月、県外移設を要求する仲井真知事が当選し、移転問題の早期決着はさらに遠のいてしまった。膠着状態をどのように打破できるのだろうか。

 たとえば、国が基地周辺に住んでいる沖縄住民に5年間程度の生活保障をして、本土に移住してもらうような具体的な交渉をできないものだろうか。沖縄県民の受け入れに名乗りを上げる本土の県には財政的インセンティブを与えるのもよいだろう。そのために国の借金がちょっとばかり増えることがあっても誰も反対しないだろう。

 鳩山前首相が首相の座を放り出して、民主党の政権担当能力に多くの国民は疑問を持つようになった。そうした中で発足した菅首相への期待感は、その後の中国漁船問題への対応で萎んでしまった。これだけ重要な問題であるにもかかわらず官邸の指導力が行き渡っていないことに国民は驚いた。衝突現場のビデオ写真は関係者のユーチューブへのリークで国民は初めて見た。

 中国の国防予算が激増しているのは誰でも知っている。そんな状況の中で組まれた防衛予算は減額予算となった。2011年から始まる5年間の中期防衛予算を、23兆4900億円としたがこれは2005年から2009年までの当初予算の7500億円減である。周辺国で軍事衝突が起きているに軍事予算を減額するのは常識では考えられない対応である。

 経済面ではどうだったろうか。円高の進行を止めるべく日銀は資金面での超緩和策を打ち出したが、その後また80円台前半に戻ってしまった。昨年末には93円だったから、円高に苦しめられ続けた一年となった。株価も円高による企業業績の悪化懸念から後半は上値の重い展開となり、今年末の日経平均が昨年末の水準を抜けるのか微妙な状況である。

 海外から日本を見ていると、日本は「腑抜け国家」のように見える。脅威を脅威とも感じず、意気地もなく、肝心なことを何も決めない国だからだ。本来ならば、国家の頭脳の部分は首相官邸が掌握し、明確な国家戦略に基づき、行政府を動かして行くのが行政の姿である。国家戦略が不透明で、そのうえ頭脳と手足はバラバラに動いている。それが今の日本である。