いつかは突破したい大台であり、ステータスも高い年収1000万円。しかし、達成した後に広がる世界は、決してバラ色ではない。管理職のポストは減少し続けている上に、女性の活用で競争は激化。その上、労働時間は際限なく増える可能性がある。年収1000万円の職場は今後不幸になるかもしれない。(週刊ダイヤモンド2014年5月3日号特集「年収1000万円の不幸」より)
「買収さえされなければ、社長就任もあったかもしれない……」
化学メーカーの管理職の茂田大輔さんは肩を落とす。50代の茂田さんは、東京大学を卒業後、化学メーカーに就職。この会社は幹部候補生の育成に熱心で、会社の費用で留学させ、海外の大学でMBA(経営学修士)を取得させてきた。茂田さんもそのレールに乗り、MBAを取得、サラリーマン人生は順風満帆かと思われた。
しかし、40代後半になって、突然、大手ビールメーカーに会社ごと買収されてしまう。そのタイミングで人事制度はがらりと変わり、「もはや役員になる可能性はないでしょう。以前は年収2000万に届くかなと期待していましたが、おそらく、現状の1300万を維持していくのだと思います」。
大手企業に入社し、よほどの過失がなければ、30代後半には課長に就任し、年収1000万円を得て、中間管理職として経営と現場の調整役を担う……。このような構造が今崩壊しつつある。
その理由はさまざまだが、企業の成長が鈍化した結果、社員の数に対して、ポストが不足しているということも一因だ。特に大量に入社した“バブル組”が管理職になるころにそれが顕著だった。
長い間、賃金カットを経験した中堅商社の幹部は「バブル世代が管理職になるタイミングにぴったり合わせて、人事制度の改革を行った」と明かす。以前は、30代半ばになると多くの社員が課長に就任していたが、今は「かなり選別され絞られている」という。