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野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

銀行の収益減少を止めるには「金融の技術革新」が必要だ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第8回】 2016年11月3日
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 前回、利ザヤ縮小による金融機関の利益減少について述べた。

 これに対処する根本的な対策は、新しい技術を導入することだ。これまで金融機関は技術にあまり関係がなかったが、いま新しい技術が登場し、事態が急速に変化しつつある。

縮小する銀行の収益
日銀や金融庁の試算でも明らかに

 金融機関の利益減少傾向は、日本銀行や金融庁の試算でも確かめられる。

 日本銀行は、金融システムレポート(2016年10月号)において、金融機関の収支の分析を行なった。

 それによると、預貸金収益等が経費を下回る先の割合は、地域銀行で50%、信用金庫で70%になる(同レポート、p.54の図表IV-5-3、図表IV-5-4)。

 同レポートは、「地域における人口減少や高齢化の進展などの構造問題が、地域金融機関の預貸業務の収益性を長期的に下押しする」と述べている。

 しかし、人口要因よりは、利ザヤ縮小が基本的な理由だ。同レポートも、「日本では、低金利・ゼロ金利の継続期間が欧州に比べ長かったため、マイナス金利導入時点で銀行の預金金利は既に低い水準にあったほか、銀行の預金調達比率も高い。このため、マイナス金利が利鞘に及ぼす影響は、欧州系銀行よりも邦銀において、相対的に大きく表れやすい」としている(BOX3)。

 また、BOX4においては、預貸利鞘の寄与度分解を行ない、市中金利の寄与が半分近いことを示している。

 金融庁は、『金融レポート』(2016年9月)の中で、地方銀行が将来厳しい状態に直面することを指摘した。

 すなわち、顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)の利益率を試算すると、2015年3月期において、4割の地域銀行がマイナスであったが、25年3月期においては、図表1に示すように、6割を超える地域銀行がマイナスになる。

 この図を見ると、15年3月末の貸出残高が2兆円未満の銀行でマイナスになる場合が多いことが分かる。

◆図表1:顧客向けサービス業務の利益率

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

 日本が直面している課題は、実体経済をいかにして改善するかである。それは金融政策によって実現できるものではない。
 金融緩和に依存して長期的に衰退の道を辿っているヨーロッパ大陸諸国と日本。それに対して、新しい情報技術をつぎつぎに開発し、高度なサービス産業に特化して成長しつつあるアメリカとイギリス。両者の差は、イギリスのEU離脱によって、具体的な 形を取りつつある。
 日本はいま、基本的な成長のパタンを大きく変更しなければならない。これは、純粋な研究開発だけの問題ではない。企業の仕組みや社会全体の構造が重要な役割を果たす。

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