ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ
【第24回】 2016年11月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
林要 [GROOVE X代表取締役]

茂木健一郎×林要 特別対談(中)
3歳のときの「思い込み」が、
鈴木一郎をイチロー選手にした

1
nextpage

自身のランニング体験について綴った『走り方で脳が変わる!』を出版した茂木健一郎さんと、感情認識ロボットPepperの元開発リーダーで、現在はGROOVE Xという会社を立ち上げて新たなロボットを作っている林要さんの対談。第2回のテーマは「個性」。個性を活かすことがイノベーションの鍵となるが、日本の学校や企業は個性をつぶす方向に教育およびマネジメントされていることが多く……。個性が尖った人、一般的な人、どちらも活躍する社会をつくるにはどうすればいいのかについて、二人が語る。(構成:崎谷実穂、写真:榊智朗)

「思い込み」が個性になる

茂木 僕は、個性とイノベーションは大きな関係があると思っているんです。林さんは、自分の能力の特異点はどこだと思いますか?

 うーん、思い込みですかね。人の個性と言われているものは、思い込みに近いんじゃないですか?

茂木 ほう、ご自分でそうおっしゃるのがおもしろい(笑)。

 例えば、イチローが人工知能だったらあの人生を選択しないと思うんです。自分とメジャーリーガーとの体格差などを考慮したら、メジャーに挑戦して勝てる可能性は極めて低いと計算されるでしょう。そもそも、選手人生における怪我のリスクなどを考えたら、野球選手になるという選択肢も選ばないかもしれない。でも、彼は子どもの頃に「野球選手になる」と思い込んだから、あそこまで大成したわけですよね。

茂木 インタビューで聞いたのですが、中日ドラゴンズの試合をほんの3歳の頃に見て、それから練習を始めたんですよね。野球選手が自分のスターだと思い込んだ。

 そういう不合理な思い込みが個性になって、限界を突破する能力が出るんだと思います。

茂木 それは、いまバズワードになりつつある「グリット」、最後までやり抜く力の話につながりますね。

アンジェラ・リー・ダックワース 「成功のカギは、やり抜く力」
https://www.ted.com/talks/angela_lee_duckworth_grit_the_power_of_passion_and_perseverance?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=tedspread

 それは、重要なポイントですね。

茂木 グリットについては、元教師の心理学者・アンジェラ・リー・ダックワースが研究をしていて、IQや才能とは関係なく、「物事に対する情熱」「目的を達成するために長い時間、継続的に努力する力」がある人が成果を出すという結果が出ているそうです。画家のアンリ・ルソーなどが典型ですよね。彼はずっと周りから絵が下手だと言われ続けていたけれど、税関の職員を務める傍ら、ずっと描き続けた。そして今では巨匠として名を残しています。下手だと言われても描き続けられるのは、もう思い込みでしかない。

 そうですね。思い込んで、粘り強く頑張るから、個性が生まれ、イノベーションが生まれる、ということかもしれませんね。ところで、粘り強くがんばれるときって、コンプレックスがもとになっていることもありますよね。必ずしも、恵まれた境遇に育った人が成功するわけではない。

茂木 林さんは、なにかコンプレックスがあるんですか?

 そうですね……意味記憶の記憶力が悪いこと、でしょうか。学生時代はそれがものすごいコンプレックスでした。九九さえも、なかなか覚えられなかったんです。クラスで下から2番目に習得が遅かった。歴史の年号とかもダメでした。

茂木 英語はどうですか?

 英単語などが覚えられないので、ダメでしたね。僕は社会人になった時のTOEICのテストが248点だったんですよ。TOEICの満点が990点で、4択問題だから、1から4の番号を書いたカードをあてずっぽうに引いて番号を書いたのと同じくらいの点数だってことです(笑)。

茂木 確率的にね(笑)。今でも英語は苦手ですか?

 それが、ドイツでF1のエンジニアとして働く機会を得て、変わったんです。渡独した当時はまだ全然話せなくて、他のエンジニアと意見が対立したときに、明らかに相手が間違っているのにちゃんと反論できなかった。それが悔しくて、涙がポロッと出ました。30歳過ぎても、こんなに悔しくて泣けてくることがあるんだなと。それで、このままではいけないと猛勉強した結果、英語で議論ができるようになりました。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
著者セミナー・予定
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


林要(はやし・かなめ) [GROOVE X代表取締役]

林 要(はやし・かなめ) 1973 年愛知県生まれ。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)に進学し、航空部で「ものづくり」と「空を飛ぶこと」に魅せられる。当時、躍進めざましいソフトバンクの採用試験を受けるも不採用。 東京都立科学技術大学大学院修士課程修了後トヨタに入社し、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」の開発プロジェクトを経て、トヨタF1 の開発スタッフに抜擢され渡欧。「ゼロイチ」のアイデアでチームの入賞に貢献する。帰国後、トヨタ本社で量販車開発のマネジメントを担当した際に、社内の多様な部門間の調整をしながら、プロジェクトを前に進めるリーダーシップの重要性を痛感。そのころスタートした孫正義氏の後継者育成機関である「ソフトバンクアカデミア」に参加し、孫氏自身からリーダーシップをたたき込まれる。 その後、孫氏の「人と心を通わせる人型ロボットを普及させる」という強い信念に共感。2012 年、人型ロボットの市販化というゼロイチに挑戦すべくソフトバンクに入社、開発リーダーとして活躍。開発したPepper は、2015 年6 月に一般発売されると毎月1000 台が即完売する人気を博し、ロボットブームの発端となった。 同年9 月、独立のためにソフトバンクを退社。同年11 月にロボット・ベンチャー「GROOVE X」を設立。新世代の家庭向けロボットを実現するため、新たなゼロイチへの挑戦を開始した。


トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ

「0」から 「1」を生み出す力を日本企業は失っているのではないか? そんな指摘が盛んにされています。一方、多くのビジネスパーソンが、「ゼロイチを実現したい が、どうしたらいいのか?」と悩んでいらっしゃいます。そこで、トヨタで数々のゼロイチにかかわった後、孫正義氏から誘われて「Pepper」の開発リー ダーを務めた林要さんに、『ゼロイチ』という書籍をまとめていただきました。その一部をご紹介しながら、「会社のなかで“新しいコト”を実現するために意 識すべきエッセンス」を考えてまいります。

「トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ」

⇒バックナンバー一覧