ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ
【第22回】 2016年7月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
林要 [GROOVE X代表取締役]

技術主導のイノベーションが失敗する
シンプルな理由
Pepper元開発リーダーが明かす「0」から「1」を生み出す仕事力

1
nextpage

イノベーションの誤訳として知られるのが「技術革新」という言葉。ところが、「技術」から発想した結果、コケた”イノベーション”は数多くあると言われています。Pepper元開発リーダー・林要さんは、ゼロイチを成功させるために大切なのは、「技術」ではなく「隠された○○」だと言います。それは、何か?林さんの著書『ゼロイチ』から抜粋してご紹介します。

 

「願望」が主で、「技術」が従

 僕は、エンジニアとして社会人キャリアをスタートさせました。
 しかし、エンジニアとしては、少し変わったところがあったかもしれません。
というのは、技術そのものを愛しているというよりも、何らかの「願望」を実現させるために技術を使うという傾向が強かったからです。

 子どものころからそうでした。
 僕は宮崎駿監督のアニメが大好きで、特に、作中に登場する印象的な乗り物に魅了されました。なかでも、『風の谷のナウシカ』のメーヴェという尾翼のない飛行機が大のお気に入り。「実際にメーヴェに乗りたい」。そう思い立って、まずは第一歩として、1mぐらいの翼をもつ模型のメーヴェを、小学生ながらつくり始めたのです。

 エンジニアだった父親は、その試作をする姿勢は喜んでいたようですが、メーヴェそのものには否定的でした。「尾翼がないと飛行が安定せず、すぐに墜落するはずだ」などと夢のないことを言うのです。「そんなわけがない。あの宮崎駿が考えたフォルムだぞ」と内心反発。黙々とメーヴェをつくり続けました。

 しかし、結果は惨敗。市販の模型飛行機を改造してつくったので、翼の出来がよく、無風のときにはスーッとたいへんよく飛んでくれたのですが、少しでも横風が入るとクルクル回りながら落ちてしまう。メーヴェを日常の移動の道具として夢見ていた僕にとって、これは致命的な欠陥でした。残念ながら、父親の言うとおりだったのです。

 でも、その悔しさが原動力になって、「なぜだろう?」「飛行機が飛ぶメカニズムとは?」と延々と考えるきっかけとなりました。そして、この経験が、その後、大学で空気力学を専攻する原点になったのかもしれません。

 中学時代には自転車に凝りました。
 近所の空地を自転車で走り回るのが楽しかったのです。当時の僕にとっては擬似的な冒険体験。だから、一見走れないと思うところを走ろうとチャレンジするわけです。そのうち、友達と競い合うようになりました。たとえば、ジャンプ。大きな段差のある場所をジャンプして、走り抜けられるかを競うわけです。

 すると、当然、自転車への負荷が高くなって、車輪が歪んで壊れるようになります。そこで、今度は改造を始めました。「車輪はどういう構造になっているのか?」「どうすれば、車輪の強度を高めることができるのか?」と研究。今、振り返ると、これは、僕なりの”エンジニア魂”の芽生えだったのかもしれません。

 つまり、僕にとって大事だったのは、「メーヴェに乗りたい」「自転車で難所を走破したい」という願望。それを叶えるために、技術を学んでいったのです。言い換えれば、「願望」が主で、「技術」が従ということ。これは、現在に至るまで、一貫して変わらないスタンスです。そして、その姿勢が結果として、その後のゼロイチに生きてきたように思うのです。 

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


林要(はやし・かなめ) [GROOVE X代表取締役]

林 要(はやし・かなめ) 1973 年愛知県生まれ。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)に進学し、航空部で「ものづくり」と「空を飛ぶこと」に魅せられる。当時、躍進めざましいソフトバンクの採用試験を受けるも不採用。 東京都立科学技術大学大学院修士課程修了後トヨタに入社し、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」の開発プロジェクトを経て、トヨタF1 の開発スタッフに抜擢され渡欧。「ゼロイチ」のアイデアでチームの入賞に貢献する。帰国後、トヨタ本社で量販車開発のマネジメントを担当した際に、社内の多様な部門間の調整をしながら、プロジェクトを前に進めるリーダーシップの重要性を痛感。そのころスタートした孫正義氏の後継者育成機関である「ソフトバンクアカデミア」に参加し、孫氏自身からリーダーシップをたたき込まれる。 その後、孫氏の「人と心を通わせる人型ロボットを普及させる」という強い信念に共感。2012 年、人型ロボットの市販化というゼロイチに挑戦すべくソフトバンクに入社、開発リーダーとして活躍。開発したPepper は、2015 年6 月に一般発売されると毎月1000 台が即完売する人気を博し、ロボットブームの発端となった。 同年9 月、独立のためにソフトバンクを退社。同年11 月にロボット・ベンチャー「GROOVE X」を設立。新世代の家庭向けロボットを実現するため、新たなゼロイチへの挑戦を開始した。


トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ

「0」から 「1」を生み出す力を日本企業は失っているのではないか? そんな指摘が盛んにされています。一方、多くのビジネスパーソンが、「ゼロイチを実現したい が、どうしたらいいのか?」と悩んでいらっしゃいます。そこで、トヨタで数々のゼロイチにかかわった後、孫正義氏から誘われて「Pepper」の開発リー ダーを務めた林要さんに、『ゼロイチ』という書籍をまとめていただきました。その一部をご紹介しながら、「会社のなかで“新しいコト”を実現するために意 識すべきエッセンス」を考えてまいります。

「トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ」

⇒バックナンバー一覧