年末年始に「日本のデフレは金融緩和の効かないもので、その原因は人口減少による供給過剰である」という「デフレ人口原因論」が多くでている。
「デフレは金融政策で解決できる」(2010年11月11日、12月2日付け本コラム参照)という私のところへも、この意見について感想を求められることもしばしばある。かなり多くの人々が「デフレ人口原因論」に共感していているようなので、このコラム「俗論を撃つ!」にふさわしい話題だ。
二つの主張で
異なる「デフレ」の意味
まず二つの主張であるが、その代表的な出典を明らかにしておこう。「デフレ人口原因論」は藻谷浩介著『デフレの正体』(角川書店)、「デフレ金融政策原因論」は、私の『日本経済のウソ』(ちくま新書)である。
その上で、両書を読み比べると、驚くことに肝心要の「デフレ」の意味が異なっている。異なった「デフレ」をそれそれで分析対象にしているので、異なった政策的インプリケーションがでてくるのだ。
そもそもデフレとはdeflationの日本語訳で、その意味は一般的な物価水準の持続的下落である。国際機関などでは、GDPデフレータが2年続けてマイナスの場合をいう。ここで一般的な物価水準というのは、個別品目の価格ではなく全品目の加重平均である「物価指数」を指す。この意味で「deflation」は、一般物価というマクロ経済現象の話だ。「日本経済のウソ」では、この国際標準の「デフレ」の意味で、一貫して書かれている。
その上で、デフレの問題は、デフレが雇用喪失や設備投資減少を引き起こすことが書かれている。そのロジックは、マクロ的な意味での名目賃金や名目利子率には下方硬直性があるために、一般物価の下落に対して、名目賃金や名目利子率がうまく対応できず、結果として実質賃金や実質利子率(それぞれ名目値から物価上昇率を引いたもの)が高くなるからだ。