11月11日、小池都知事は、定例記者会見において、「国際金融都市・東京の実現に向けた検討体制について」と題して、かねてからの公約であった、「東京をアジアナンバー1の国際金融都市としての地位を取り戻す」構想について、その概要を開示した。筆者は東京都顧問として小池知事を支え、本構想の下準備をしてきた立場にある。そこで本稿では、既に東京都として開示している資料の範囲内で、筆者なりの問題意識を述べることとする。ただし、本稿は、あくまでも筆者の個人的見解であり、東京都としての公式見解ではないことをあらかじめお断りしておく。
小池知事が会見で述べた
重要なメッセージ
本論に入る前に、11日の小池都知事の記者会見内容についておさらいしておきたい。詳細に報じたメディアは少ないが、極めて重要なメッセージが含まれているからだ。
小池知事は、冒頭で、「東京がアジア・ナンバーワンの国際金融都市の地位を取り戻すことは、私が目指す<スマートシティ>の最重要パーツ。このための取り組みに、いよいよ着手する」と、公約の実現に向けて強い意欲を示した。その上で、以下のように続けた。
「金融産業の振興は、ロンドン・ニューヨークの例を待つまでもなく、都市の魅力や競争力を維持する上でも、また、2020年までにGDP600兆円を目指すとしている政府の成長戦略を実現する上でも避けて通れない課題であると思う」
そして、日本の金融業のGDP比はわずか5%程度であり、12%(出所:TheCityUK)となっている英国に大きく見劣りすること、そして、その比率を5%から10%に引き上げることができるならば、単純計算でGDPを約30兆円内外押し上げることになると述べた。実際、自民党は2012年の総合政策集で、「金融業のGDP比率を10%台に押し上げる」としており、小池都知事の主張は、安倍政権のGDP600兆円構想を後押しするものになろう。
小池知事は、さらに、「金融の活性化については、これまで何度も手がけられてきたが、必ずしも十分な効果が上がっているとは言い難いと考えている」とした。