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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

BBC番組がいかに二重被爆者を取り上げたか
彼らは何と言っていたのか

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第34回】 2011年1月26日
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英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は日本メディアがロンドン発で一斉に報じてからここ数日話題となっている、BBCのコメディトーク番組についてです。「二重被爆者の方を笑った」という報道がされ、被爆者やご家族の方々を始め、多くの日本人が怒っているこの件を、英国メディアも伝えています。このコラムではそれに加えて、では番組で実際にいったい何がどう言われていたのかを少しご紹介したいと思います。どういうことだったのか、よろしければ各自でご判断いただきたいからです。(gooニュース 加藤祐子)

BBCが謝罪した内容は

 日本の主要各紙およびNHKが20日から21日にかけて伝え、ネット上でも大変な話題となった話なので、多くの方はすでにご存知でしょう。

 英BBCに「QI」という、クイズ形式のコメディトーク番組があります。「QI」とは「quite interesting(なかなか興味深い)」の意味。世の中の様々な興味深い物事、森羅万象に付いて、詳しく知ろうじゃないかという番組です。昨年12月の放送で日本の二重被爆者、山口彊(やまぐち・つとむ)さんを取り上げました。その最中に出演者や観客が笑っている様子を見た在英日本人が大使館に指摘し、大使館がBBCに抗議。日本メディアは、番組が山口さんの体験を「世界で最も不運な男」だと「冗談交じりに取り上げ」たと伝え、ご遺族などに取材。ご遺族や複数の被爆者の方々はBBCに対する怒りをあらわにしました。こうした事態を受けてBBCと番組制作会社が連名で謝罪。内容はこうです。

 「気分を害された方々に謝罪します。QIは番組で取り上げる人や話題に関して誰かを不快にさせるつもりなど決してありません。しかし今回の場合、日本の視聴者にとってセンシティブな題材である以上、番組で扱うのはふさわしくないと日本の人たちが感じた理由は理解します(We are sorry for any offence caused. QI never sets out to cause offence with any of the people or subjects it covers. However on this occasion, given the sensitivity of the subject matter for Japanese viewers, we understand why they did not feel it appropriate for inclusion in the programme)」。
——これが日本で伝えられている概要です。

BBC謝罪について英メディアは

 ことの次第について英メディアでは、たとえばBBCニュースが 「BBC apologises for Japanese atomic bomb jokes on QI(BBCがQIでの原爆ジョークに謝罪)」という記事を22日付で掲載。「コメディクイズ番組『QI』で交わされたジョークについて、BBCは日本大使館の抗議を受けて謝罪した。番組の回答者たちは、第2次世界大戦で広島とその2日後に長崎で被爆し、生き延びたツトム・ヤマグチの経験を、軽く扱った」 と説明し、そして上述したBBCの謝罪を伝えています。

  『スコッツマン』紙では「日本大使館から抗議されテレビ番組が謝罪」という記事で、経緯を説明。とりわけ回答者が「爆弾がその人の上に落ちて、跳ねとんだ」とか「要はあれだね、コップは半分空だというか半分入ってるというかで。でもどちらにしても、放射能を帯びてるわけだ」と軽口(quip)を叩いて観客が笑ったことに、日本人が不快感を抱いたと説明しています。

 ちなみに「コップは半分空か半分入ってるのか(is the glass half empty or half full)」というのは英語でよく使われる慣用句で、コップに半分水が入っているのを見て「半分入ってる」と前向きにとらえるか「半分空だ(つまり半分しか入ってない)」と後ろ向きにとらえるかはその人次第だと言う意味です。

  英『タイムズ』紙(リンク先は豪『オーストラリアン』)の記者で日本取材の経験豊富なリチャード・ロイド=パリー氏は、「原爆生存者について冗談を言ったことをBBCが謝罪」 という見出しで、経緯と共に、山口さんの長女・年子さんがNHKの取材に対し「許せないです。おもしろおかしくとりあげるってことは。核を持ってる国、落とした側に、運が悪いとかいいとか言われたくない」と語った様子を紹介。さらにロンドンの日本大使館の広報官が同紙の取材に答えて、「番組は、山口さんを笑っていた(mocking)というよりはイギリスの鉄道を笑っていたのだと承知している。しかし山口さんの体験をこういう番組で扱うのはまったく不適切で無神経だった」と話したことを伝えています。

  保守系『テレグラフ』紙は、 「原爆ジョーク」について日本から抗議されてBBCが謝罪したと手短に伝えています。同紙の場合、記事内容は事実関係のみですが、コメント欄が日本人には辛く厳しいものになっています。保守系の同紙だからというのも多少はあるでしょうが、日本をよく知らない多くのイギリス人ならこの件についてこう反論してくるだろうと予想できるそのままの内容です。「なぜ謝罪?」、「何が問題なんだ? 真面目な顔をしていないと原爆の話はしちゃいけないのか?」など。さらには「慰安婦問題」や「日本軍による英兵捕虜虐待」や「南京虐殺」を引き合いに出して、彼らが「加害者」と思う日本人の反応を批判したり、当惑したりしています。

  ことの顛末を知った多くのイギリス人は「なぜ謝罪?」、「何が問題なんだ?」と感じている。実を言えば私のイギリス人の知り合いたち、そしてネット上でやりとりするイギリス人の多くも、「なんでそんなに怒るの?」という反応でした。ことさらに保守でも、もちろん反日的でもないのに。「日本人が原爆でつらい思いをしたのはよく分かるけど、でもあの番組が笑っていたのは、日本の鉄道のすごさとイギリスの鉄道の駄目さ加減だったのに」と当惑していました。 まさに、『タイムズ』紙の取材にロンドンの日本大使館が答えたのと同じことです。

  日本の新聞報道でも、番組の出演者たちが、広島原爆投下の翌日から鉄道が動いていた日本とイギリスの鉄道を対比していたと紹介されていました。では実際に番組で、彼らは何と言っていたのか。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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