「変革したい」と誰もが言う。でも動かないのはなぜか

日本の大手企業の間では、クラウドへの移行が進み、生成AIへの投資が加速している。それでも、事業の形が変わったという手応えを得られている例は少ない。今、大手企業が直面しているのは、投資の不足ではなく、投資が変革に結び付かないという事態である。

JBS社長の牧田幸弘氏は、経営トップの変革意識はかつてないほど高まっていると話す。

「大手企業の経営者は皆、既存のビジネスモデルを踏襲するだけでは、グローバルでも国内でも厳しい競争に勝てないという危機感を持っています。事業変革をしたいと、切実に感じているのです」

しかし、「したい」と「できている」の間には、大きな断絶がある。それはどこで生まれるのか。

JBSが顧客企業の現場で捉えている課題は三つある。個別最適の積み重ねでクラウドがサイロ化し、運用が煩雑になっていること。生成AIを巡っては投資が先行する一方で、技術の進化への追随や自社環境への適用に手間取り、実用化の手前で止まること。そして、(システムやアプリケーションの)内製化志向は高まっているのに、事業とITを橋渡しできる人材が大幅に不足していること。

いずれも技術の問題に見えるが、牧田氏が分岐点として挙げたのは、もっと手前にあるものだった。それは、経営トップが何を「やめる」かを決断できるかどうかだ。

「各事業部門の意見を聞いて、みんなにとっての最善策で何とかしてあげたいという調整型の発想では、変革は進みません。本当に必要な事業は何かを見極めていくと、実は『やめなければいけないこと』が多く出てきます。時には痛みを伴う決断をできるトップがいる企業は変わっていけます」

その変革に対して、牧田氏は明るい展望を持っている。

「日本の大企業には優れた点がたくさんあり、特に従業員は非常に優秀です。トップが正しい方向付けをして人材を育てれば、ビジネスはどんどん変革できます」と語る。だからこそ、「トップの信念と明確な指針が何よりも大事なのです」と付け加える。

信念と指針を組織に実装するには、仕組みが必要だ。トップの決断を現場の業務へ変換する工程といってもいい。日本の大手企業がつまずいてきたのは、この工程だった。

ITを丸投げするのではなく、現場で共に変革する

決断を仕組みに変える工程は、多くの場合、システムの構築という形を取る。ここに落とし穴がある。顧客は自社の業務について誰よりも詳しいが、IT・デジタルの専門家ではない。そのため要望は、「今の仕事を楽にしたい、効率化したい」という方向に傾きやすい。目の前の業務をそのまま残してシステム化しようとすれば、設計に無理・無駄が生じる。例えば、本来なら整理すべき例外処理を数多くシステムに盛り込み、稼働後のエラーや問題を招くことになる。

JBSではこれまでも、無理・無駄が生じないように顧客との対話を重視してきた。だが牧田氏によれば、システムだけにフォーカスした対話では、ピントの合った設計にはつながりづらい。発注側が「こういうものが欲しい」と言い、受注側が「それでは工数が膨れ上がる」と返す。この往復をいくら重ねても、認識のズレはなかなか埋まらない。

そこでJBSが軸足を移したのが、企画段階からの参画である。

「お客さまが新しいシステムやサービスを作る企画の段階から参画して、一緒になって作っていく。実際にこのアプローチを取ると、確実に成果が上がるということが分かってきました」

象徴的なケースがある。ある大手企業のプロジェクトチームに、JBSのエンジニアが企画段階から常駐した例だ。

「同じチームに入ると、お客さまの業務を毎日目にすることになります。ですから『こうしたい』という要望に対しても早い段階で提案や軌道修正ができ、企画・設計・開発・実装・運用の一貫性が保たれ、期待した成果を得られるのです」

DX・AXが止まる会社と、動き出す会社。その分かれ目はどこか日本ビジネスシステムズ(JBS)代表取締役社長
牧田幸弘

同じ現場に立っていれば、イレギュラーな要望に対しても「それを組み込むのはおかしい」「むしろこうした方がいい」と、その場で議論ができる。JBSは、システム構築を丸投げで引き受けるのではなく、顧客が自分で作れる状態——内製化を支援する立場を取る。とはいえ、インフラやセキュリティーの領域はやはりプロに任せるほかない。そこを専門家としてJBSが引き受けることで、顧客による内製化は現実的な選択肢になる。そして、デジタルとビジネスの両方が分かる人材が顧客の社内で育っていけば、システム投資のROI(投資収益率)と成果創出のスピードは必ず上がる。牧田氏はそうみている。

この考え方は、JBSの事業構造そのものにも組み込まれている。JBSは事業の軸を、ライセンス&プロダクツからエンジニアリングサービスへと拡大しつつある。併せてビジネスサービス、AIサービス、グローバルサービスの3領域への投資を増やし、体制強化を進めている。顧客の関心が、デジタルツールの導入そのものから「いかに使いこなし、ビジネス変革につなげるか」へ移っているからだ。

自ら実践するからこそ、変革に伴走できる

顧客の変革に伴走するためには、単に技術を知っているというだけでは不十分だ。新しいテクノロジーが現場でどのように活用され、どこでつまずき、いかに定着していくのか。その一連のプロセスまで深く理解していることが不可欠となる。

デジタルを使いこなす力を、JBS自身はどうやって獲得しているのだろうか。答えは、「自社実証(リアルショーケース)」の取り組みにある。

大企業向けのコミュニケーション基盤、クラウドインフラ、セキュリティー——JBSが手がけるこれらの技術は、どれも業種・業態を問わず必要とされるものだ。だからこそ、まず自社で使い、実際に稼働させ、検証する。このリアルショーケースを徹底し、勘所を押さえた上で顧客にサービスとして提供する。それがJBSの原則だ。

「どのお客さまにも必要とされる技術だからこそ、当社でまず試して、実際に稼働させて知見を蓄積した上でお届けしています。自分たちで体験しているから、『こういう使い方をした方がいいですよ』と実践的にお伝えできるのです」

生成AIでも同じ道筋をたどった。マイクロソフトが Microsoft 365 Copilot(以下、Copilot)をリリースした初期の段階からJBSは全社員が使える環境を整え、今では多くの社員が他者に活用方法を説明・支援できるレベルに達している。さらに、Copilot以外にも、業務領域によって優位性を持つ他社AIのライセンスを、必要とする社員に付与した。業務のドメインに応じて複数のAIモデルを使い分けるマルチAIモデルも実践しており、その知見はすでに顧客向けサービスにも反映されている。

JBSがリアルショーケースを重視するのは、単なる技術検証のためではない。現場で技術を定着させる難しさや、組織に変革を根付かせるプロセスを自ら実体験することで、顧客の変革により深く伴走できるようになるからだ。

DXやAXを進める企業は増えている。しかし、システムを導入しただけで変革が実現するわけではない。JBSが多くの企業を支援する中で実感しているのは、「導入」と「変革」の間には大きな隔たりがあるということだ。だからこそJBSは、技術を提供するだけでなく、顧客企業がデジタルを理解し、主体的に活用できる状態をつくることを重視している。

「お客さま自身がデジタルを理解し、自ら活用できる状態にならなければ、本当の意味での変革は実現しません」

多くの企業には優秀な人材がいる。事業を最も理解しているのも、その企業で働く社員たちだ。JBSはITのプロフェッショナルとして、企業と同じ目線で課題に向き合い、時には企画段階からプロジェクトに参画し、変革を支援している。

技術をデリバリーすることと、使われる状態をつくることは違う。JBSが顧客の変革に伴走できるのは、自らも変革の実践者だからだ。自社実証で得た知見を形式知化し、顧客の現場で再現可能な価値へと昇華させる。その実践を繰り返しているのが、技術と業務の両方を理解しようと努めるJBSの人材である。

技術の深さと顧客の業務理解が変革を支える

JBSは独立系でありながら、大手企業と直接取引し、プライム(元請け)で案件を受注する。企画・開発から運用までを一貫して担い、特定のプロダクトやサービスに縛られず、最適な技術をフラットな視点で選定・提案できる。中立的な立場を保っているので、判断基準は顧客の課題に置かれる。

ただし、人海戦術で勝てるわけではない。

「会社の規模では、大手資本系列のSIer(システムインテグレーター)と真っ向勝負はできません。だからこそ、われわれにしかできない技術を磨きに磨いて、ここだけは負けないという強みをつくってきました」

社員は3000人弱。うちエンジニア比率は約76%、マイクロソフト認定資格の保有者は延べ約4700人を数えるなど、人員の厚みではなく、技術の密度と深さで勝つという戦略である。

それだけに、牧田氏がエンジニアに求める水準は高い。担当する業界の真の専門家になれ、というのだ。

「金融機関なら金融機関、製造業なら製造業の業務を、本当に細かいところまで理解しなさいと言っています。そこまで理解するには少なくとも数年はかかりますが、それだけ時間をかける価値があります」

顧客の事業の専門部隊と対等に話せてこそ、まだ言語化されていない課題を浮かび上がらせ、その解決策を共に導き出すことができる。牧田氏が「時間をかける価値がある」と言う理由はそこにある。

JBSのこの姿勢は、国境を超えて広がりつつある。かつて日本企業の海外システムは現地で完結しがちだったが、今はセキュリティーやライセンスを含め、日本でガバナンスを利かせて世界を一元管理したいというニーズが高まっている。JBSは米国、メキシコ、シンガポール、タイ、中国に拠点を構え、日本と同等のサービスを海外でも提供する。中期経営計画が掲げる姿は、顧客をワンストップで支援する「ビジネスITパートナー」だ。

日本には、ものづくりを筆頭に世界に誇れる技術や製品・サービスがある。それらを自信を持って世界へ展開することが重要だ、と牧田氏は考える。その展開を支えるためにJBS社員に求めるものは、突き詰めれば一つだ。

「お客さまの業務を本当に理解して、価値あるサービスを提供する。そして『JBSと組んで本当に良かった』と、心から喜んでいただくことです」

●問い合わせ先
日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)
〒105-5520 東京都港区虎ノ門2-6-1 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー20F
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