相撲協会は全面否定してきたが
大昔から囁かれていた八百長の存在

 財団法人化されて87年目の日本相撲協会に最大のピンチが訪れた。ご存じの通り、十両力士のメールから八百長が発覚し、人々から国技として認められてきた信頼が完全に失墜したのだ。

 八百長相撲の存在は大昔から囁かれてはいた。角界には八百長に関する隠語がある。真剣勝負は「ガチンコ」、ずばり八百長は「注射」、その仲介者が「中盆・なかぼん」。こうした隠語があること自体、八百長があったことを暗示している。

 だが、相撲協会は一貫して「八百長はない」と否定し続けてきた。過去には何度も八百長疑惑が取りざたされたし告発者も出たが、そのたびに「疑惑が持たれているのは無気力相撲。疑われるような無気力な相撲を取らないよう指導を徹底する」と追及をかわした。しかし今回はメール記録という明確な証拠があり、該当力士も「やりました」と白状。グレーゾーンにあった八百長の有無が、一瞬にしてブラックに塗り替わったのだ。

 この非常事態に相撲協会は春場所の中止を決断。前回の当コラムでは相撲協会が行っている慈善活動として福祉大相撲のことを紹介したが、それも中止された。料金を取ってお見せするものではないというわけだ。

 そうして猛省すると同時に問題を徹底解明し、出直しを図るとしている。が、地に堕ちた信頼を回復するのは並大抵のことではない。稽古場での力士暴行死事件、マリファナ問題、野球賭博の発覚といった一連の不祥事や日本人人気力士の不在などで、ただでさえ大相撲の人気は落ちている。今回の八百長発覚でそれが加速するのは間違いないし、公益法人の認可が取り消される可能性もある。そうなったら現状の体制を維持するのは不可能だ。

 ただ今回の騒動で相撲界全体が八百長に染まっていると見る人もいるようだが、そんなことはない。筆者には元力士の知人がいて、たまに会って話をする。その元力士は関取(十両以上)になれずに廃業。また、所属した部屋も弱小で関取はひとりもいなかった。