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情熱クロスロード~プロフェッショナルの決断

『この世界の片隅に』監督が語る、映画に仕込んだ“パズル”(下)

片渕須直・『この世界の片隅に』監督インタビュー

ダイヤモンド・オンライン編集部
2016年12月9日
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>>(上)から続く

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

前例に基づく効率主義を廃し
大人の支持を集める方法

──今、お話が出たように、映画の制作費などの資金調達にクラウドファンディングを使いました。2015年3月18日から5月29日の82日間で3374人の支援者と3622万4000円を調達し、国内でクラウドファンディングの最大の成功例と言われています。この手法は当初から考えていたのですか?

 前作の『マイマイ新子と千年の魔法』がそもそもそういうスタイルになっていたんですよ。

 というのは、『マイマイ新子と千年の魔法』は主人公が小学生なんです。だけど、そうすると自動的に、ある人たちは「これは子ども向きの映画であり、お母さんが子どもを連れて冬休みとかに観に来るようなタイプの映画だろう」と勝手に考えちゃうんです。

 それはそれでいいんですけど、実際には子どもが自発的に今まで知らないタイトルの映画に注目して、「これに行きたい」と言って親を引っ張ってくるってことはないだろうと僕は思ってたんですよ。僕らが子どものころはそういうこともまだあったとは思うんです。児童向きの映画とか単発の子ども向きのテレビドラマってたくさんありましたから。でも、今はもう、昔と違っていて、いっぺん売れてしまったものに対しては「こういうものが売れる」とタイトルが固定されちゃっているんですね。

 ここ20年くらいはもう、テレビでやっているテレビアニメの子ども向きの時間帯ってタイトルが固定されてるでしょう。そこで生まれ育った子どもにとって、新しいタイトルのものが入ってくること自体が想像の埒外なんです。

 だとしたら僕が、『マイマイ新子』っていう小学生が主人公の物語であるにもかかわらず、これをまず大人が観る映画として作るべきだと思っていたんですよ。

──なるほど。

 ところが、興業側は、「これは子ども向きの映画だから夕方17時開始の回をラストにしましょう」っていう風にしちゃう。すると仕事帰りの方は来られないんです。そもそも「子ども向きのものはこの時間帯」という前例主義みたいなものがある。それは前例に基づいた効率主義でもあるんですけど、それによって、前例がないものを作った時に無効になってしまうんじゃないかな、と。逆に言うと、前例にないもののほうが無効にされてしまうんですよ。そう思ったんですね。

 そうすると、僕らができる努力として、普通のファーストランで子ども向きの時間帯と設定されていようが、その次に大人が観られるレイトショーを自分たちで場所を探して上映してもらうということをやったんですね。

 それと同時に、そういう形態で上映されることをさらに望みますという署名活動を始めてくださった方がいらっしゃったんですよ。そのときはお金を集めていないのですけど、今のクラウドファンディングの方法と同じで、皆さんが名前を連ねて、私はこういうものを支持したいですという方がたくさん出てきてくださったんですね。

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音楽、スポーツ、文学、科学――。これらの世界には、高い才能を持つマエストロたちがいる。ジャンルを問わず彼らに共通するのは、他人にはマネのできない深い「情熱」である。常に新しい時代を創り出し、世の中をリードし続ける彼らは、日々何を見つめ、どんなことを考えているのか。知られざる「異才の素顔」にスポットを当てる。

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