Photo:AFP/JIJI
3D映画「アバター」の大ヒット以降、各テレビメーカーが相次いで発売した3Dテレビ。その3Dテレビで3D映像を見るためには専用メガネが必要となるが、メーカーごとにメガネの規格が異なるため、一部メーカー間を除いて互換性はない。つまり、パナソニック製の3Dメガネをかけてシャープ製の3Dテレビを見ても、立体映像を見ることはできない。
そんななか、異なる規格を統一する動きが水面下で進みつつある。今年3月には団体が設立され、動きが本格化する見込みだ。賛同予定メーカーは、パナソニックと三菱電機、日立製作所などで、ほかにも、世界の映画館の約半数に導入されている3Dシステム「XpanD」なども参加すると見られる。統一されれば、市場の約半数の3Dメガネの規格が統一される。
規格統一への旗振り役はパナソニック。その理由は大きく二つだ。
まずは、質の高い3D映像を広め、3Dテレビの本格普及を後押しすることである。3D映像の画質はテレビに加えメガネの性能にも左右される。そのため、3D映像の画質に定評のあるパナソニックが「ノウハウは流出するが、高画質の3D映像が広がるほうがメリットは大きい」(小塚雅之メディアアライアンス室室長)と判断し、ノウハウの一部公開に踏み切った。
そこには3Dを一過性のブームで終わらせたくない事情がある。パナソニックが製造するプラズマディスプレイは液晶ディスプレイに押されて厳しい。だが、3Dに関しては、プラズマは液晶より応答速度が速いなど3Dに適している。つまり、3Dテレビの普及はプラズマの復権につながるのだ。
次に、家電量販店など販売店からの要望だ。現状では、テレビメーカー別に3Dメガネの在庫を持っておかねばならないが、統一されれば在庫を格段に減らせる。
もっとも、規格の統一には障壁もある。
まず、テレビ最大手の韓サムスン電子やソニー、シャープは、現時点で参加を予定していない。「サムスンやシャープにはこれから打診する」(関係者)ため統一される可能性があるが、ソニーは、「規格が大きく異なるため難しい」(同)。一部の有力メーカーが除かれれば、消費者は混乱しかねない。
さらに、パナソニックなどと3D方式自体が異なる陣営が幅をきかせる中国だ。既存の液晶画面にフィルムを貼れば3Dテレビを作れる手軽な方式で、中国のテレビメーカーなどが採用している。昨年12月に中国でこの方式の技術発表会が開催され話題となった。近々に世界最大のテレビ市場となる中国では、3Dの方式をめぐる争いが起こりつつある。日本メーカーは、メガネの規格統一の前に、この争いに勝たなければならない。
期待の高い規格統一だが、どこまで足並みを揃えられるかが焦点となるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)