AOLがハフィントンポストを3億1500万ドルで買収するというニュースは、ここ米国のメディア界を驚かせた。
片や、「ユー・ガット・メール」のフレーズとともに、ポータル・プロバイダー全盛期の1990年代後半を華やかに彩ったものの、その後タイム・ワーナーとの「世紀の(企業)結婚と離婚」を経て、マイナ―な存在に落ちてしまったメディアサイト。もう一方は、政財界の著名人を多数著者に持つ“今が旬”のオンラインニュース・ブログサイト。このふたつが、結婚していったいどうなるのか。
AOLは、もともとはダイヤルアップのインターネットサービスプロバイダーとしてスタートして多くの利用者を集め、ポータルサイトとして栄華を極めた。全盛期の2000年にはタイム・ワーナーを1600億ドルで買収。インターネットの新興メディアが、伝統ある巨大メディアを飲み込むというドラマティックな展開に、誰もがネット革命の波の大きさを感じたものだった。
ところが、間もなくネット革命の第二波が到来。AOLを飲み込んだ。ダイヤルアップから高速インターネットへの移行である。利用者が他の接続会社へどんどん流出したうえ、「ポータル」という考え方自体が陳腐化。同じポータルから一日を始めることが時代遅れとなり、人々は雑多なニュースがアグリゲートされたニュースサイトや検索に時間を費やすようになったのである。
この流れにすっかり取り残されたAOLは、2009年にグーグルの重役だったティム・アームストロングをCEOに迎え、さらにタイム・ワーナーからスピンアウトして事業刷新を図ったが、利用者の減少に歯止めをかけることはできなかった。AOLは大丈夫なのか?その先行きを懸念する声は高まっていた。
しかし、ここにきて、AOLが描いている新戦略がおぼろげながらも見えてきたといっていいだろう。それは、他にはない独自のユニークなコンテンツによって利用者をひきつけ、広告収入のみならず、場合によっては有料購読モデルでサイト事業を運営していくというものだ。
じつは今回のハフィントンポスト買収に先立って、AOLでは複数のメディア関連会社を買収している。
たとえば、テクノロジー情報サイトとして一目置かれているテッククランチ、ビデオ配信技術のスタジオナウや5minメディア、広告配信ネットワークのピクテラ、ソーシャルメディアリーダー開発会社のシング・ラボなどだ。