市場が2017年の米利上げ回数を3回だと織り込まないように、懸命に説明を繰り返したジャネット・イエレン米FRB議長 Photo:Abaca/アフロ

「潜在成長率をかなり上回る成長が続いていく」。12月20日、黒田東彦・日本銀行総裁は金融政策決定会合後の会見で、2017年の経済・物価動向に楽観的な見方を示した。

 会見では、円安の行き過ぎを抑えるために10年物国債金利の誘導目標を引き上げる可能性はあるか、といった質問が出ていたが、黒田総裁はまったくつれないスタンスを示した。景気見通しを上方修正したとはいえ、直近16年10月時点のインフレ率(コアCPI〈消費者物価指数〉)はいまだにマイナス0.4%と、マイナス圏にある。

 日銀は16年9月の「総括的な検証」で、コアCPIが「安定的に2%を上回るまで」金融緩和を続けていく必要があるとの「オーバーシュート(行き過ぎ)型コミットメント」を発表したばかりだ。黒田総裁は「海外金利が上昇するのに応じて、当方の目標を引き上げたり、長期金利が上昇したりしていいとはまったく考えていない」と述べ、インフレのオーバーシュートを目指す姿勢をあらためて強調した。

 一方、ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長はその前週(12月14日)の会見で、米経済を過熱気味の状態にする「高圧経済」の必要性を後退させた。彼女はインフレをオーバーシュートさせる意図はないことを説明しており、黒田総裁とは対照的だ。黒田総裁は、本音ではもう一段の円安を望んでいるのだろう。