「自分の人生はこれで良かったのか」――。人生や会社生活について、誰でも真剣に悩むことはある。医師にして作家、ニュース番組のコメンテーターとして知られる鎌田實氏も、かつて自分の生き方に疑問を感じ、もがき悩んでいたという。そこで、鎌田氏がたどり着いのが「遊行」の精神。「遊行」とは、先入観やこだわりを捨て、自由な感性で生きることだという。折しも、鎌田氏は1月21日に『遊行を生きる 悩み、迷う自分を劇的に変える124の言葉』(清流出版)を上梓する。そこで、本を書いたきっかけや遊行の精神などについて聞いた。(ジャーナリスト 木原洋美)
野垂れ死にするほど
自由になれ
人はつくづく見かけによらない。
医師にして作家、ニュース番組のコメンテーターでもある鎌田實氏もそうだ。諏訪中央病院名誉院長を務めるかたわら、チェルノブイリ、イラク、東日本大震災の被災地支援等に取り組み、「がんばらない」をモットーにしながら、多方面で常に100%以上の精力的な活動を行っているこの人ほど、人生を自由に、思いのまま生きてきた人はいないように見えるのだが、実は70歳を目前にして「ある壁」にぶつかり、悩み、苦しんでいたという。
「ある壁」の正体は、自分の生き方に対する疑問――。
「これまでの自分は、本当に自分自身を生きてきたのだろうか」「(周囲の期待に応えようと)"いいカマタ"を演じて、無意識のうちに無理をしてきたのではないか」「このまま老い、死んでいくときに後悔してしまうのではないか」と悩み、もがき続けていた鎌田氏を救ったのが、著書のタイトルにも使われている「遊行(ゆぎょう)」という言葉だった。
「遊行」とは、古代インドの聖人が、人生を「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」の4つに区切った最後の時期で、死の準備の時期、人生の締めくくりの時期とされているが、鎌田氏の解釈はちょっと違う。