2015年、中学卒業者の高校進学率は98.5%であったが、それ以外の約4000人は就職し、約8700人は進学も就職もしなかった。また同年、全国で4万9000人が高校を中退した。そうした人々は、未成年ゆえにできないことが数多くあるにもかかわらず、「働ける」と見なされて福祉の対象になりにくい。不利な状況の中で消耗しながら年齢を重ねてゆくサイクルを断ち切る鍵は、「高校」と「生活保護」にある。
大人と子どもの「谷間」に落ちた
若者たちのサバイバル
坪井恵子さん(56歳)は、福岡市の一般社団法人「ストリート・プロジェクト」(以下、ストプロ)で理事長を務めている。ストプロの目標は「ユース(筆者注:おおむね15-25歳)の貧困と孤立を防ぎ、解消し、自立と夢の実現を!」だ。ストプロの支援を受けている「ユース」たちは、そもそもなぜ、貧困状態にあり、孤立しているのだろうか?
「ストプロのユースのほとんどは、親にネグレクトされてきています、生活保護世帯の場合、親が食費を含めて子どものためのお金を使い込んでしまっていたり、適切な衣食住を与えて養育することを放棄してしまっていたりすることもあります」(坪井さん)
なかには、「子どもを搾取している」としか言いようのない親もいる。
「高校生の子どもが奨学金を得て、それで校納金を支払うつもりだったのに、親が使い込んでしまい、高校中退に追い込まれそうだというケースもありました」(坪井さん)
坪井さんは2000年代後半、自分の子どもの1人が高校に進学しなかったいきさつをきっかけとして、中卒や高校中退の若者たちの「生きづらさ」に目を向けるようになった。坪井さんの子どもは、好きな仕事に就き、努力を重ねて「手に職」をつけ、現在は立派な職業人として活躍している。しかし一般的に、最終学歴が中卒のままでは、職業選択やステップアップの可能性が非常に少なく、安定した就労を長期に継続することは難しい。そして15~25歳の年齢層に対しては、公的支援が極めて手薄なのだ。