あらゆる商品がサービス化するなかで、「所有」から「利用」へと、世の中の仕組みが変化している。それは、クラウド化によって、ライセンスビジネスから、サブスクリプションモデルに移行したソフトウェアビジネスに留まる話ではなく、あらゆる業種、あらゆる業態に波及しようとしている。
そうしたなか、注目を集めているのがZuoraである。自らを「ビジネスモデル・イノベーション・プラットフォーム企業」と位置づける同社は、サブスクリプションモデルを実現するために必要とされる機能を、プラットフォームとして提供。これによって、企業のイノベーションを支援する役割を担う。
2015年に日本法人を設立し、2016年から、日本語バージョンを投入。すでにコマツや東芝などの大手企業が採用し、日本での展開を本格化させているところだ。米ZuoraのTien Tzuo(ティエン・ツォ)創業者兼最高経営責任者に話を聞いた。
10年前、利用ベースの課金モデルは
「バカげている」と言われた
――2007年にZuoraが創業して以来、今年で10年目を迎えます。この間、サブスクリプションモデルに対する市場の変化をどう捉えていますか。
ティエン・ツォ(以下・ツォ) Uberやネットフリックス、スポティファイといったサービスが、多くの人に活用されているいまでこそ、これからはサブスクリプションモデルが重要であるということを多くの人が理解しています。しかし、我々が創業した2007年当時は、そうした仕組みに理解を示す人たちはごく少数であり、むしろ“クレイジー”だとさえ言われました。
しかし、年を追うごとにサブスクリプションモデルを採用した多くの成功事例が生まれ、Zuoraに対する期待が急速に高まっていることを感じます。たとえば、Uberを利用すれば、自動車を所有しなくてもいいと感じる人たちが増えてきました。必要なものをサービスとして届けてもらい、それに対する対価を支払えばいいという考え方の人が増加してきたといえます。
――こうした変化は創業時に想定していたものですか。
ツォ あらゆる業種や業態が、「プロダクト販売」から「サブスクリプション」へと移行していくことは想定していました。たとえば、自動車産業においても、サブスクリプションモデルが活用されることは想定していましたし、実際、フォードやGMが、自動車の製造、販売だけではなく、カーシェアリングという新たなビジネスに踏み出し、そこにサブスクリプションモデルを採用しています。
日本でも、IDOM(旧ガリバーインターナショナル)が、月額定額クルマ乗り換え放題サービスを、サブスクリプションモデルによって実現しています。
唯一、想定と異なったことは、ここまで速くスマートデバイスが普及するとは思っていなかったことです。これは、サブスクリプションモデルの広がりには追い風となっています。ミレニアル世代と呼ばれる若い人たちは、クルマも買わないし、家も買わない。そして、スマートフォンを持つだけで、あらゆるサービスを利用しています。モノを所有せずに利用する時代が、スマートデバイスの広がりによって一気に加速したともいえます。