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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国メディアも感心した大震災発生後の
日本社会の落ち着きと素朴な疑問

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第44回】 2011年3月17日
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 この頃、私のところに世界中から安否を確かめる電話とメール、そしてメディアの取材依頼が洪水のように来ている。いうまでもなく今回の地震と原発事故のためだ。

 一番多いのが安否を確認するものだったが、原発問題がクローズアップされてからは、中国への退避を促す電話とメールが激増している。子どもを日本に留学させている親たちからの電話やメールの相談もひっきりなしに来る。

 さらに、「中国に退避したいがエアチケットが入手できず困っている。何とかエアチケットを入手してもらえないか」といった相談も毎日、何件か来ている。女性からの依頼なら、アドバイスをしたり、旅行会社の窓口や幹部を紹介するなどしてできるだけのことはするが、男性に対しては、日本は私たちの第二の故郷で、男である以上はこういう時期にこそ私たちが負うべき社会的責任を果たすべきだと叱咤している。出張の相談も来ているが、こういう時期に日本を離れることに抵抗を覚えている、出張時期を変えてもらえないかと私の飾らぬ心境を打ち明け、幸い先方も快く応じてくれた。

 非常に感動することもある。中国のメディアからの取材要請だ。被災地現場を取材したいという複数のメディアから、通訳や車両の手配を頼まれた。いずれも緊急を要する案件だけに、在日中国人社会の関係者も快く応じてくれた。なかには深夜10時半に私のところに駆けつけて出発前の打ち合わせ会議に参加してくれた人もいた。

 福島原発のニュースがテレビで繰り返し放送されるなか、みんなが動揺せずに被災地に出発した。なかには私の娘とそう変わらない年齢の女性もいる。記者とはいえ、仕事とはいえ、生身の人間であることには変わらない。しかし、車に乗り込み、とまどいもなく被災地へ走っていく彼女たちに大きな勇気を得た思いがした。車の到着場所を知らせるメールが送られてくる度に、私はこみ上げるものがあった。彼女らの見えない後ろ姿に、国境、人種を超えたある種の共通のものを感じたからだ。

 私のところに取材に来た中国のメディアも米国のメディアも、危機的な状態にある日本社会が見せた落ち着きと保たれている治安状態に驚いている。中国のメディアに、こうした日本に学ぶべきだと主張する報道記事が非常に多いのもそのためだと思う。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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