発生から1週間あまりが経過した東日本大震災。被害規模が過去最大ならば、経済に与える損失も膨大だ。生産設備の破損に加え、インフラ寸断、部品不足などボトルネックが引き起こす経済縮小の危機に直面している。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大震災取材班)

※本記事は、「週刊ダイヤモンド」3月26日号(22日発売)に掲載された緊急特集「列島激震」の一部を、前編・後編の二回にわけて公開したものです(前編はこちら)。

交通網、電力供給、通信網……
インフラ寸断で深刻さ増幅

 世界の地震観測史上5指に入る今回の大震災。長さ600キロメートルにわたって断層を破壊した巨大エネルギーは、南北に果てしなく延びた巨大津波を生み、東北地方を中心に社会インフラを寸断した。

 交通網もその一つだ。右の地図には、東北地方の主要な鉄道、高速道路、港湾、空港のうち震災で稼働していないものを記している。これらは復旧のメドが立っていなかったり、本格復旧にはそうとうの時間を要するものが大半で、物流業者への影響は甚大である。

 たとえば、JR貨物は、東北・北海道地方から本州方面に、主に野菜をはじめとする農産品、自動車部品などを運んでいるが、現状ではお手上げの状態だ。迂回路を中心にトラックやフェリーなどの代替輸送手段の活用を検討しているが、現段階では、いつ案がまとまるかもわからないという。

 ヤマト運輸も対応に追われている。東北6県と茨城県の一部で震災直後から荷受けを停止した状態。東北各地で停電のため伝票処理ができず、「直接的に被害を受けた4県以外も荷受けができない」(同社)。北海道と関東地方間の輸送は、輸送ルートが安定しないため、7~10日程度の遅延が発生する可能性があるという。

 そこに追い打ちをかけるのが、燃料不足の問題である。5ページでも詳しく触れるが東北地方はもちろん、関東でも、トラック燃料が十分に確保できていない。グループ会社で給油したり、街中のガソリンスタンドで給油したりして対応しているが、いずれも計画どおりに燃料を確保できていないのが実情だという。

 さらに、地元の中小業者にとって深刻なのは、物理的な影響が及んでいるという点。ある業界関係者は「宮城から岩手、青森まで沿岸の防波堤のすぐ近くを走っていた国道45号線の近辺に、たいていのトラック輸送業者は拠点を持っていたので、ほぼ壊滅状態になったはずだ」と明かす。

 高速道路がこれだけの長距離にわたって通行止めになったのは初めてのことという。通行止めが解除された区間も、今は緊急車両だけしか通行できず、いつになれば、一般のクルマが通行できるのかも不透明な情勢だ。

 流通関係者は、「このままでは、被災地周辺で商品の製造工場が復旧しても、原材料を輸送できず、供給不安が続く恐れがある」と指摘する。

 コンビニ大手のローソンでは、東北地方と茨城県にある911店舗のうち、16日時点でも119店舗が休業を強いられていた。たとえ営業していたとしても、品薄状態で、流通インフラの混乱は続いている。