今では多くの企業や自治体が、事業計画の根拠として利用する人流データ。特にここ数年、活用が広がったのはコロナ禍がきっかけだった。〝三密の回避〟という深刻な問題に対処するため、人の流れや滞留を正確なデータで把握することを求められたことが理由である。

今、その用途は大きく広がり、自治体によるまちづくり、デベロッパーの不動産開発、小売・飲食業の店舗開発やマーケティングなど、さまざまな目的で人流データが活用されている。「人の流れ」は「お金の流れ」であり、「人が集う場所」には「お金も集まる」からだ。

データソースや取得方法はさまざま

テクノロジーの急速な発展とともに、人流データの取得方法も進歩と多様化を遂げている。

代表的なのは、今や国民の8割が保有するスマートフォンからのデータ取得だろう。携帯電話基地局につながっているスマホの台数や、GPS(衛星利用測位システム)で捕捉したスマホの位置情報などを基に、人の分布や、移動の軌跡などが把握できる。

特定のエリア内に一定時間以上滞在する人の数を計測できるのが、Wi-FiやBluetoothの信号検知だ。商業施設や観光地などに、何人が、どのくらいの時間いたのかを見ることができる。

屋内外にセンサーやカメラなどを設置し、通過する人をカウントする方法もある。商業施設やイベント会場に設置すれば、店舗やブースごと、時間帯ごとの混雑状況が分かり、人の流れのコントロールなどに役立つ。

この他、最近活用が広がっているのが、交通系ICカードから取得した人流データを集計して提供するサービスだ。

交通系ICカードなら、出発地と目的地が特定できるので、通勤・通学圏や、どのエリアからどの商業施設や観光地に来る人が多いのかといった人の流れが精緻に把握できる。

しかも、定期券の購入者であれば、年齢や性別といった属性までひも付けられるのがユニークな点である。

このように、人流データの種類とデータの取得方法(下表参照)はさまざま。精度や特徴もそれぞれ異なるので、用途に応じての使い分けや、組み合わせをするとよい。

なお、プライバシー保護や個人情報漏えい防止のため、人流データを利用する際には、慎重に取り扱うことが必要だ。

また、人流データサービスには、専門的なデータ解析スキルがなければ十分に使いこなせないものもある。専門人材がいない場合、誰でも使えるサービスかどうかを確認したい。