「原子力発電事業のリスクは切り離すことを考えなければならない」。ある東芝幹部の言葉は、同社の経営危機の本質を突いている。
米原発事業の損失が最大7000億円規模に膨らむ危機に陥っている東芝は27日、分社化する半導体のフラッシュメモリー事業の一部売却や保有資産の売却で、3月末の債務超過を回避する方針を発表した。
だが、原発事業が東芝全体を揺るがし続けてきた経営構造の問題は、放置されたままにある。
2006年に買収した米原発子会社ウエスチングハウス(WH)は、11年の東京電力福島第一原発の事故による世界的な建設計画の遅れで、13年3月期と14年3月期の2年で計1150億円の単体減損を計上。14年3月期と15年3月期には米原発建設計画「サウステキサスプロジェクト」が事実上とん挫したことで計720億円の減損を計上している。
さらに不正会計問題が発覚した16年3月期には、WHの連結ベースで2500億円の減損を計上し債務超過の危機が迫ったが、医療事業の東芝メディカルシステムズを6655億円で売却して免れた。
そして17年3月期は、WHが米国の原発建設の遅れを取り戻すために買収した米企業が巨額損失を計上する見通しになったことで再び債務超過の危機に陥った。
前期末に売却した医療事業は営業利益率5%を安定的に稼いできた優良事業で、今回の売却対象となったフラッシュメモリー事業も今期10%超の営業利益率をうかがう勢いの稼ぎ頭だ。
東芝内部では「医療の次は半導体。原発で損失を出すたびに利益の出ている事業の売却を迫られるのは、どう考えてもおかしい」(半導体部門)と不満の声が上がる。
喫緊の課題は債務超過の回避。それに向けて東芝は、3月末までに分社化するフラッシュメモリー事業の20%未満の株式の引受先を探すため入札手続きに入る。米ウエスタンデジタルや外資系ファンドなど複数が候補になる見込みだ。