10歳から星空を自作してきた男が超えたプラネタリウムの常識大平貴之・大平技研代表取締役/プラネタリウム・クリエーター Photo by Yoshihisa Wada

 大平貴之のプラネタリウム作りは10歳(小学4年生)のときに始まった。以来、プラネタリウム開発の第一人者となった今も「多くの人たちに自作の星空を見てもらいたい」という思いは全く変わっていない。

 理科や工作が大好き。その代わり、整理整頓などはからきし苦手。そんな風変わりな大平少年はある日、文房具店で小瓶に入った夜光塗料を目にする。暗闇で光る液体に興味津々、早速小遣いで買い求めた。あれこれ試みながら、その液体を塗った紙を小円形に切り取り、7畳ほどの自分の部屋の壁に貼ってみた。有名なオリオン座の並びを再現できるように、である。

 夜光塗料のオリオン座は思いの外奇麗だった。さらに大犬座、双子座……と壁に貼り付けていき、最終的には1000個ほどの星々を作り上げた。

 両親、親戚、それに担任の先生や友人なども、この自作プラネタリウムに招待。木の棒を使い、解説も披露すると、観客は皆「すごいね」と拍手し、褒めてくれた。

 大平少年はプラネタリウムを自作し、喜んでもらう魅力にまさに取りつかれたのである。