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岸博幸のクリエイティブ国富論

福島第一原発20~30キロ圏内で何が起きているのか
自主避難という政府の低劣レトリックで深まる危機

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第133回】 2011年4月1日
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 福島第一原発を巡って予断を許さない状況が続いていることは、日々の報道から皆様もご存知と思いますが、地元の経済は、政府の中途半端で自らの体面や保身を優先した対応により大変なことになっています。

20~30キロ圏で政府がやっていること

 読者の皆様もご承知のように、政府は福島第一原発から20キロ圏の住民に対しては避難指示を出していますが、20~30キロ圏の住民に対しては自主避難を促すに止まっています。

 この“自主避難”というのは、実は非常に中途半端な命令であることをよく考える必要があります。20キロ圏については法律に基づく命令を出しているので、明示的に危険地帯であると認定しているに対して、20~30キロ圏については、“基本的には安全だけど、念のために自主的に退避した方がいいですよ”と言っているだけなのです。

 この、20~30キロ圏が危険なのか安全なのかが不明確な政府の中途半端な対応により、現地では大きな問題が生じています。

 政府内からの情報によれば、先週後半の官邸内の会議で「20~30キロ圏の住民には自主退避を促す一方で、動けない人々のために、圏内における経済活動の正常化を民間企業に促す」という、絵に描いたようなアブハチ取らずの方針が確認されたそうです。

 また、その方針を受け、地元の経済活動に関連する様々な業界(小売、運輸、輸送など)に対しても、監督官庁を通じて、出来る範囲で従来通りの営業をしてくれないかという打診が来ているようです。

 しかし、当たり前のことですが、政府は20~30キロ圏が危険地域と認定している訳ではないので、被曝の可能性について関係者の身の安全は政府が保障しないことが前提となります。となると、従業員の生命と安全を守ろうとするまともな会社は、当然ながらなかなか協力できません。

 このため、地元のまともな会社の多くが事業の再開を渋っていると、今度は官邸から、「官邸には20~30キロ圏内で活動すると志願する企業が来ているんだから、業界団体で志願者を募れ!」という圧力が色々なルートからかかってきたようです。

 しかし、そのように志願してきた企業の実態は、震災で仕事がキャンセルとなって経営が苦しくなった民間企業が、にっちもさっちも行かなくなって手を挙げているケースが大半のようです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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