衆院選は予想どおり自民党の圧勝という結果に終わり、安倍政権が長期安定政権として今後も経済運営を担っていくことになりました。

 となると、過去2年に十分な成果を挙げることができなかった成長戦略、より正確には構造改革を進めることが期待されます。また、地方・中小企業・低所得者層といった弱者の消費が特に弱まっていることを考えると、安倍首相自ら最重要課題と言っている地方創生を正しいアプローチで進めることも期待されます。

 しかし、衆院選の翌日に自民党本部で行なわれた安倍首相の記者会見での冒頭発言を聞くと、本当に大丈夫だろうかと心配にならざるを得ません。

成長戦略は大丈夫?

 まず成長戦略について、安倍首相は以下のように述べています。

「農業、医療、エネルギーといった分野で大胆な規制改革を断行し、成長戦略を力強く前に進めてまいります」

 私はまずここに違和感を覚えました。アベノミクスの3本の矢のうち、過去2年の経済運営でもっとも進捗が遅いことで金融市場をはじめとする関係者の間で衆目の一致する成長戦略について、“大胆な規制改革を断行します”と一言で済ましてしまっているからです。

 過去2年の間、成長戦略を進めるのを阻んできたのは自民党内の抵抗勢力であり、各省庁の官僚でした。選挙に大勝して抵抗勢力的な議員が皆当選したことを考えると、その構図は選挙後もまったく変わっていないのです。

 それなのに、具体的にどう進めるのかについてまったく説明せずに“断行する”と断言しても、少なくとも政策に関する知識のある海外の投資家にとっては全然説得的ではないと思います。