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大震災が襲ったホテル業界
暗い現実とわずかな特需

週刊ダイヤモンド編集部
2011年4月4日
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 東京のホテル業界関係者のあいだでショックが走った。世界的なホテルチェーンであるシャングリ・ラ ホテル 東京が当面、営業を停止すると発表したのだ。「お客が求めるサービスを提供できないから」というのが表向きの理由だが、原発問題でマネジャーやシェフが帰国してしまったことと、海外からの客のキャンセルが相次いだことが引き金になった。

 東京はどこも壊滅的だ。特に単価の高い外資系ホテルは閑古鳥が鳴いている。「原発問題が長引き、欧米のビジネス客のみならず、中国やシンガポールのビジネスマンも来ない。東京離れが起こっている」とある外資系ホテルの営業担当は嘆く。

 8割以上の稼働率を誇っていた帝国ホテルも、いまや4割に落ち込んでいる。アジアの団体客で強かった京王プラザホテルでも稼働率は半分を割り込んでいる。

 「海外のお客のなかには、拠点を東京から香港に移す動きが加速している」(業界関係者)。実際、香港のシャングリ・ラ ホテルは3月下旬に予約が急増した。

 日本国内では特需はないのか。東北新幹線で3月29日時点での終点となっている栃木県の那須塩原。駅前にあるビジネスホテルでは、復旧作業や計画停電があるなかで、稼働率は8割以上と高い。「震災当初はクルマで逃げてきたという被災者が多かったが、今はビジネス客の連泊が大半。福島の営業所への救援部隊がここを拠点にしている」と担当者は複雑な表情で話す。

 他方、カジュアル衣料のH&Mやタバコのフィリップ・モリス・ジャパンなどの外資系企業のなかには、拠点を東京から大阪に移す動きが出てきた。大阪のホテル業界は、「3月の稼働率は前年同月を上回った」(帝国ホテル大阪幹部)とはいうものの、表情は暗い。「大震災から2週間は拠点を移す企業などから連泊の予約が入ったが、今はむしろホテルから借り上げマンションに入居させる方向に動いている」ためだ。

 マンスリーマンションのレオパレス21には、「福島の工場の従業員を別の工場にシフトさせるため」と、大震災後に延べ1万件もの問い合わせが舞い込んだという。「保険会社など、被災地への応援部隊として、宮城や岩手の受注も増えてきた」こともあり、3000件の契約にこぎ着けた。その一方で、「ライフラインが復旧した」などの理由で、4000件のキャンセルがあった。特需も長続きはしないようだ。

 「春休みは東京から離れたいというお客が多いためか、沖縄のホテルの稼働がいい」(ビジネスホテルのスーパーホテル)という声も部分的には聞かれる。それでもピンポイント。自粛ムードも加わってホテル業界の苦境はしばらく続きそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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