>>(上)より続く

 翔太さん夫婦が裕子さんの代わりに私のところへ相談しに来たのは、そんな矢先でした。裕子さんは憔悴しきっていて第三者と話すことができるような精神状態ではなく、また翔太さんも裕子さんにどんな言葉をかけていいか分からず、私に助けを求めてきたのです。

 せっかくエスカレーター式の私立小学校に進学したのに、親の都合(学費未払い)で公立の中学校への転校を余儀なくされたら、娘さんはどうなるでしょうか?「いくら頑張っても見えない力が働いて努力が無駄になる」と思えば、今後の人格形成に悪影響を与えるでしょう。

 しかも、今まで通い慣れた学校、仲良くなった先生や友達も失います。さらに転校先の学校で偏見の目で見られ、差別の対象になり、いじめに遭うこともあり得ます。裕子さんは夫に対して「娘のため」という点を前面に出して生活費の支払を求めたのですが、私立小学校へ進学することを反対していた夫には裏目に出ました。そこで私は「娘のため」ではなく「自分(夫)のため」という点を強調した方が良いのではないかとアドバイスしました。

医者の夫から確実に
生活費を回収するには?

 医者の大半はプライドが高く、今回の夫も「反対を押し切って受験させたこと」を今でも根に持っています。だからこそ、話をまとめるときも『プライドの高さ』に焦点を当てるのが大事です。「〇〇ちゃんは学費を払えなくて学校を辞めたらしいよ」と学校や近所、親戚中で噂を立てられたら、夫のプライドはどうなるでしょうか?

「開業医で十二分にお金を持っているのに娘の学費を滞納し、中途退学に追い込んだ最低最悪な父親」と醜聞を流されるのは夫にとって耐え難い屈辱でしょう。今回の件を言いふらされたくなければ月30万円を支払ってほしいという具合に、生活費の再開は「娘のため」だけでなく「自分(夫)のため」という切り口で説得した方が得策だろうと言い添えました。裕子さんが私の助言通りに行動に移したところ、6ヵ月ぶりにようやく30万円が裕子さんの口座に振り込まれました。

 しかし、わずか1ヵ月分の生活費を手に入れただけで満足するわけにはいきません。過去の言動を振り返れば、夫はまた気分次第で生活費を止めてくる可能性が高く、夫は金にものを言わせて、わがまま放題に振る舞うでしょう。そして裕子さんが振込の停止を恐れて夫に対して言いたいことを言えず、まるで奴隷のようにビクビクと怯えるようでは困ります。夫の機嫌をうかがうことなく確実に生活費を回収できるようにしたいのですが、どうすれば良いでしょうか?