今回取り上げるのは、中国で初めて外資系レンタル企業として認定を受けた上海エイトレント(上海八蓮正陽総合物品租賃有限公司)。今や他の日系企業もオフィス用品をはじめとしたレンタル事業を展開しているが、なんと同社が事業展開をはじめた2004年まで中国には“レンタル”という概念がほとんど浸透していなかったというから驚きだ。そんな環境にもかかわらず、開業3年で黒字化、右肩上がりの成長を続ける背景にはどのような苦労と秘策があったのだろうか。日本で総合物品レンタル会社を展開するエイトレントの代表取締役であり、上海エイトレントの董事長でもある中塚克敏社長に進出成功の裏側を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
高度経済成長期、「地球環境を守ろう」と創業
レンタルの重要性を説くために中国へ
――日本で総合物品レンタル企業として創業してから50年近い歴史を持つ「エイトレント」が、中国へ進出しようと思われたきっかけはどんなことだったのでしょうか。
先代である私の父が事業を立ち上げた1963年(昭和38年)。当時は、高度成長期の真っ只中。大量生産・大量消費が当然の時代でした。そんななかで父はその時代に逆行するように「もったいない」「地球環境を守ろう」と訴え続け、それがレンタル業の礎となりました。
当時はもちろん日本だけのスタートでしたが、海外に目を向けるきっかけになったのは1974年に東京と大阪で開かれた中国博という博覧会でレンタルの発注をいただいたことです。ここで大きな成功を収め、中国の方と交流する機会があったことが中国進出を視野に入れるきっかけになりました。
また、高度経済成長期にある中国ではかつての日本の十数倍の人たちによって大量消費がなされています。このままでは地球環境に大きな影響を与えることは必至。そんな状況にある中国の方々に、同じものを繰り返し使う“レンタル”を伝えたいという思いが芽生えたことも、参入を後押しすることになりました。
とはいえ、いきなり中国へ進出できるという時代ではありませんでした。そこで、まず中国でのビジネスの機会を探るため、1996年から台湾に海外拠点を設けました。そして中国に何度も足を運んでパートナー探しなどの準備を行い、02年に中国進出を決断。04年、上海エイトレントを創業しました。