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岸博幸のクリエイティブ国富論

【福島県南相馬市・現地レポート】
原発事故で地元商工業も崩壊の危機に
被災地を追い詰める政府の曖昧な対応

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第135回】 2011年4月15日
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 今週、福島県の南相馬市に行ってきました。そこで目の当たりにした惨状は思っていた以上に深刻でしたので、今週は南相馬市が直面している問題について説明したいと思います。

三重苦の現実

 桜井市長がメディアやネットに登場しているので、南相馬市という名前は多くの方がご存知と思います。福島第一原発の北に位置し、原発から20キロ圏、20~30キロ圏、30キロ以上離れたエリアが混在する自治体です。

海岸線から約1キロ内陸に入ったところでも、この惨状。

 南相馬市は海岸に面しているので、宮城や岩手と同様に、地震と津波の被害をもろに受けています。特に海岸沿いの地域は、津波の被害がかなり大きく、海岸線から1キロ程度内陸に入ったところでも、写真のような状況でした。市長の話では、まだ遺体の捜索も十分には行なえていないようです。

 ただ、南相馬市が宮城や岩手の被災地と異なるのは、地震と津波に加えて、福島第一原発の事故の影響をもろに被っているということです。

 南相馬市役所や原ノ町駅といった市の中心部は、海岸から離れていることもあり、地震や津波の被害は大したことなかったのですが、原発から20~30キロ圏に入っているため、現在は屋内退避となっており、市役所以外のところは本当に人通りがない、寂しい状況になっていました。

 私が確認した限り、南相馬市役所から原ノ町駅まで歩いて15分ほどの間に空いていた店の数は、数えた限りで20もありませんでした。典型的な小さな地方都市ですので、おそらく東日本大震災の前から中心市街地の衰退は始まっていたはずですが、地震・津波よりも原発事故が主因で、地元の商業が崩壊を始めているのです。

 さらに悲惨なのは工業でした。東北や北関東は電子部品や電子材料の工場が集積しており、それが地震と津波で大きな被害を受け、製造業のグローバル・サプライチェーンに影響を及ぼしていることは、既に様々な報道でご承知のことと思います。

 しかし、地震と津波で工場が損壊しただけならば、それを修復すれば操業を開始できます。実際、民間企業の現場の力は凄まじいまでに強いので、大震災以降猛烈な勢いで復旧に取り組み、1ヶ月経った現時点で、部分的ながら操業を開始している工場が増えています。

 これに対して、南相馬市にある工場は、いくら地震や津波による損壊を修復しても、原発事故の影響で操業を開始できないのです。つまり、商業と同様に地元の工業も原発事故で崩壊の危機に瀕しているのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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