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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

大学生よ、今こそ海外の「現場」を目指せ――震災でアジア労働市場の大競争に放り出される日本の若者たち

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第8回】 2011年4月20日
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 東日本大震災が発生して1ヵ月以上経過した。「日本の力を信じよう」という声が日本中に溢れる一方で、震災が日本に与えたダメージの甚大さを痛感させられる。やはり、震災前の日本に戻ることは困難であり、経済成長以外に価値を置く新たな国家像が必要だ。

もう震災前には戻れない
――高品質の部品、素材の生産拠点の破壊

 日本が震災前に戻れないことを何よりも痛感させられるのは、震災によって破壊された製造業の生産拠点のことを考える時だ。現在、リチウム電池の電池材料、携帯式DVDプレーヤーの液晶パネル、自動車部品であるバッテリーの電解質、ゴムの弾性を強化する添加剤、塗料の顔料など、日本以外では容易に代替できない部品の生産や、亜鉛、銅、銑鉄、エチレン、紙、インキ、セメントなどの産業素材の供給が滞り、世界中の工業で創業停止が相次いでいる。

 しかし、中国、韓国、台湾、東南アジアは日本の復興を待たず、日本以外からの部品調達の検討を始めている。また、タイ政府が日本から生産を移す企業に税制の優遇措置を検討するなどの動きもある。日本企業がこれに応じて被災地の工場を再建せず、アジアへ生産拠点を移してしまうと、日本の技術の核心部分が海外流出する。

 一方、日本国内では自社工場の復旧をあきらめた中小企業が「これ以上、迷惑はかけられない」として、長年蓄積してきた部品の開発・製造ノウハウが詰まった仕様書を大企業に差し出している。これも日本人の誠実さを示す「美談」だが、シビアな大企業は仕様書を海外部品メーカーにあっさり渡すだろう。

 日本の製造業の技術力のアドバンテージは失われ、日本国内から製造業の生産拠点が大幅に縮小するかもしれない。そうなれば、日本企業は若者の新規雇用枠を更に縮小させるのは必至だ。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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