ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

(2005年10月、マレーシア)

 検品を終えた幸一は、食事を後回しにしてくれとリムに頼み、山を降りてクアラトレンガヌの町へ入り、ホテルへチェックインした。

 シャワーを浴びて今日一日の汗を洗い流してからレポート用紙に向かい、検品結果の報告を箇条書きで簡略に仕上げて、それをフロント脇にあるビジネスセンターから日本の三栄木材本社へファックスした。

 部屋へ戻ろうと幸一がロビーを横切っていると、ポケットの携帯電話がベルを鳴らし始めた。腹を空かせたリムからの電話だと思ったが、取り出して画面を確認すると『UNKNOWN』との表示。おそらく日本からだろうが、誰だろう。

 「もしもし」

(山中君か、ファックス見たよ)

 声の主は、意外にも社長の岩本だった。2代目として父親から社長職を引き継いで日が浅い岩本は、まだ40歳を幾つか出たばかりで、社長としては若かった。

 「あ、お疲れ様です。今ファックスしたばかりですよ、お早い連絡に驚いています。まだ会社にいらしたんですね」

 幸一は、早すぎる対応に嫌な予感を覚えつつ、ロビーのソファに腰掛けた。

(ああ、こちらは8時過ぎだ。そっちは1時間違いだから、7時かな?)

 「はい、これからリムさんと食事に行く予定です」

(それは邪魔をしてすまないね。時間は大丈夫かい?)

 「ええ、今は私ひとりです」

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


村上卓郎(むらかみ・たくろう)

1965年生まれ。大学在学中に中国へ留学。会社勤務にて貿易業務と海外駐在を経験。現在は独立して貿易仲介業を営む。初めて書いた『認命(レンミン)――さだめ』が第3回城山三郎経済小説大賞で最終候補に残り、選考委員から絶賛される。


連載経済小説 運命回廊

〈第3回〉城山三郎経済小説大賞は、異例の2作品が大賞受賞。惜しくも選から漏れたものの、大賞作に劣らぬ魅力があると各選考委員から絶賛された隠れた名作があった。
その作品とは『認命(レンミン)――さだめ』。
バブル期の日本になじめず、中国に渡った青年は、なぜ中国に残ってビジネスを続けるのか――。共産党の支配下で急成長する中国経済をリアルに描いた話題の経済小説が『運命回廊』と改題して、ついにWEBで連載開始!

「連載経済小説 運命回廊」

⇒バックナンバー一覧