原発事故により今後巨額の賠償負担を負う東電に対する政府の支援策が、ほぼまとまりつつあるようです。そのポイントは被害者への補償金支払いを支援するための新機構の設立で、来週後半にも閣議決定されるようですが、現時点で判明している概要からは、東電と金融機関に甘く、国民に安易にツケ回ししようとしているとしか考えられません。

支援策の概要

 4月21日段階で判明した情報からは、支援の枠組みは概要以下のとおりと思われます。

・基本的には東電が自己資金で補償金の支払いを行なう
・東電による補償金支払いを支援するための新機構を設立する
・新機構には、原発を持つ電力会社が負担金を拠出する他、政府が交付国債を発行し、また金融機関の融資に政府保証をつける
・東電が賠償で債務超過に陥りそうな場合、政府に特別援助を求め、政府が援助を決定すると、新機構が東電に資金支援を行なう他、必要に応じて資本注入(優先株引き受け)を行なう
・東電は、将来の利益から長期間にわたり新機構に返済を行なう

 もし実際の支援策がこの通りの内容となった場合、東電や金融機関に非常に甘いと言わざるを得ないのではないでしょうか。東電をなんとか延命させ、税金負担も最小化し、金融機関への影響も最小限にとどめようとして、その一方で電力料金値上げという形で国民にツケ回ししようとしているからです。

企業再生の基本を逸脱したやり方

 東電は株式公開企業です。通常、株式公開企業が事業に失敗した場合、まず企業が厳しいリストラなどを通じて債務を返済し、それでも足りない場合は、減資という形で株主が、そして金融債権カットという形で債権者が責任を負うというのが、市場のルールのはずです。

 それなのに、今回の支援策をみると、これらのまず最初に責任を負うべき者の責任負担があまりに不十分です。