東日本震災を機に、これまで絶好調だった外国人の旅行客数が激減し、観光産業に大きな打撃を与えている。それどころか、これまで日本で生活していた外国人も、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出してしまった。外国人の心理にとりわけ大きな影を落としているのは、原発事故に伴う放射能不安である。福島原発の事故評価がチェルノブイリと並ぶ「レベル7」に引き上げられたことで、今後、外国人のマインドがさらに冷え込むことが懸念されている。日本が長年かけて築き上げてきた“安全神話”は、完全に崩壊した。政府や東京電力の対応に不信感が募るなか、「外国人逃避ショック」はいつまで続くのか? そして、日本経済の牽引役の1つだった「外国人消費」を再び呼び戻すためには、どうすればよいのだろうか?(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)

衝撃を受ける日本政府や民間企業
まさかの「外国人旅行者半減」に募る不安

 都内を歩いていると、外国人の減少を実感させられる。少し前まではコンビニにはアジア系の店員が多かったが、最近では日本人の店長が空いてしまったシフトの穴埋めをしている場面によく遭遇するようになった。外資系企業の一部は、社員を続々と本国へ帰国させている。

 3月11日に発生した東日本大震災は、福島原発事故を招き、放射能漏れという想定外の事態を引き起こした。水道水から放射性物質が検出されたことを受け、日本中がパニックに陥り、特に幼い子どもを持つ親の間で不安が高まっている。

 外国人を親に持つ子どもが多く通っているある保育園では、園児の半分近くが一時帰国してしまったという。また、筆者の周りでも、国際結婚した母親が子どもを連れて本国に“避難”するケースが見られた。現地での報道を見ながら夫が残っている日本の情報をチェックし、不安な日々を送っている人もいる。

 さらに、大きなリュックを背負った観光客を見かける回数も少なくなっている。政府観光局の発表によると、3月の外国人旅行客の数は約35万人で、前年同月と比べて50.3%も減少。観光庁の推計では、昨年、訪日外国人が日本で消費した金額は1兆1490億円にも及んでいるが、これが激減することは目に見えている。