>>(上)より続く
*週刊文春 2016年2月4日号〜2017年1月26日号
・ウェブ掲載見出し(連載、グラビア等除く) ・以下の言葉は除外 <THIS WEEK|政治 |社会 |国際 |経済 |スポーツ |芸能 |ワイド特集|+本誌取材班>
*週刊新潮:2016年2月4日号〜2017年1月26日号 ・ウェブ掲載見出し(連載、グラビア等除く)
以下の言葉は除外 <ワイド|特集|特別読物>
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例えば、高畑裕太氏の事件では、多くの人が「真相は何だ」ともやもやしていたと思います。そのときに事件の詳細を証拠とともにつかむことができた。そこで「全真相」という見出しを打って事件を詳報しました。
──本当にそうなのかと思い、「週刊文春」とライバル誌の「週刊新潮」の主要見出し1年分を調べてランキングにし、比較してみました(右図)。確かに「真相」や「正体」は少なかったです。「週刊新潮」が「日本」という言葉や政治・外交ものの単語が多いのに対して、「週刊文春」は「告白」や「直撃」、「スクープ」「本誌」といった単語が上位に並びます。「妻」が上なのは意外でしたが。
面白い試みだと思います。われわれには、一つのニュース記事を書く上で「当事者に直撃しろ」という大原則があります。もちろん、相手が答えないこともありますが、その表情がどうだったのか、身につけているものが何だったのか、それも大切な情報だと思います。現場の生々しさを大事にしているのです。
作家の松本清張に「週刊誌は生体解剖だ」という名言があります。すでに評価の定まったものではなく、生きているところを解剖するから読者は興味を持って読んでくれているという趣旨です。生体解剖は切れば血が出るわけで、メスならぬペンさばきが問われますが、現場の臨場感や張り詰めた雰囲気もしっかり伝わるように心がけているのです。
もし、どうしても本人に届かないときは、最も身近である配偶者、妻にも当たります。だから「妻」という言葉が上位に来るのも分かります。「告白」や「告発」も当事者の肉声にこだわっているからですね。「スクープ」も「本誌」も、常に自分たちが誰よりも早く「対象に肉薄する」という姿勢の表れなのです。
事件や出来事の核心をつかみ、生のまま読者にお届けしたい。きれいに加工して特徴のないものにするより、その素材の良さを生かして新鮮なまま届けたいと思っています。
──著書でも、ここ1、2年のスクープの裏側が書かれていて、生っぽさがあります。
2012年に私が編集長になってからスクープ路線を強く打ち出しました。デジタル化が進み、出版不況と言われる中で、なぜ時代に逆行するようなチャレンジを続けたのか。今回、本を書くに当たって「週刊文春」の戦いの記録を残すという意図もありました。まあ、そういうキッタハッタの話しかできないということもありますが(笑)。