1.円安、ドル安、ユーロ高
世界経済は複雑に入り組んでいる。日本では1000年に一度の震災が勃発し、その被害が拡大するなか、消費税率の引き上げが画策され始めた。
米国では連邦債務が法定上限に迫るなかでも、FedはQE2を打ち切る構えである。欧州でもギリシャやポルトガルの財政不安が再燃するなか、ECBは利上げを続ける公算である。そして各国の経済政策が政局と絡んでいるだけに、相場は決め打ちが難しい。
日米ユーロで最も健全な経済圏はどこか。年初来の為替相場を実効レートで振り返ると、三極通貨で一貫して弱いのがドルである。現在14.3兆ドルに設定されている連邦債務上限の引き上げについて、米政府と議会が合意できなかった場合、理論上はデフォルトに陥るリスクが発生する。また、格付け機関のS&Pは米国債の長期格付けの見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げている。
逆に、一貫して底堅いのがユーロだ。確かにギリシャでは債務リストラの懸念が高まっているほか、フィンランド議会で反EU政党が躍進したことで、EFSFの機能拡充やポルトガル支援の行方が混沌としてきた。それでもドイツなど中核国の景気は堅調で、財政不安はスペインなど大国に波及せず、二極化で吸収されるようになった。今後は5月16日のユーロ圏財務相会合が注目される。
注目すべきは実効円である。過去を振り返ると、そもそも変動相場制度が導入されてから円高の傾向が続いており、特に米国の住宅バブルが変調し始めた2007年以降は上昇ピッチが加速した。