苦境が続く地方私大の中で、この10年で志願者を5割も増やした金沢工業大。研究レベルが高く、最新のテクノロジーを学生教育に取り入れるといった先進性が高く評価されているからだ。(「大学通信」情報調査・編集部部長 井沢 秀)
地方私大困窮の時代にあって
志望者を増やしている金沢工業大
大都市圏の大学への志願者集中が止まらない。2016年の私立大入試では、近畿大や明治大、早稲田大といった首都圏や近畿圏などの20大学で、総志願者の半数近くを占めた。そうした状況を文科省はよしとせず、地方の大学にも志願者が回るよう、都市部の収容定員が8000人以上の大学を対象に定員管理の厳格化を進めている。
定員管理の厳格化が始まったのは16年入試から。それまでは定員の1.2倍を超えると私学助成金の不交付の対象になったが、倍率は段階的に引き下げられ、19年からは1人でもオーバーすると、超過人数分の助成金がカットされる。こうして都市部の大学の入学者が減れば、地方の、特に私立大への進学者が増えるという目論見だ。
それだけ地方の私立大が置かれた状況は厳しいということだが、文科省の施策に頼らずとも、志願者が増えている希有な大学がある。金沢工業大だ。今春の志願者数は8830人(3月9日時点)で、07年の5870人と比較して50%増となっている。
志願者の増加とともに、合格者のレベルも上がっている。駿台予備学校の難易度によると、金沢工業大で最も高い学科の難易度(合格者の偏差値を基に算出される)は、07年入試の41から、17年入試は47と6ポイントも上がっている。かつて、金沢工業大は工学院大や東京電機大、愛知工業大、大阪工業大などと難易度に開きがあったが、今では、これらの工科系大学とほぼ同水準になっている。