高木 基
電通 コピーライター
カンヌ、クリオ、ギャラクシー賞グランプリ、TCC、ACC、電通賞ほか受賞多数。東京コピーライターズクラブ会員。主な仕事に任天堂「Wiiの間」、大塚ビバレッジ「ジャワティストレート」、「カブドットコム証券」など。

  電通のコピーライターである高木基氏は、そのコツは「具体で考える」ことにあるという。

 「どの仕事も思いつきから始まっているが、抽象ではなく具体で考え、知恵を働かせるという順序で行っている。缶飲料のコピーならば、プレゼンの日まで実際に商品を手元に置き、飲んだ後シンクに転がしたり、ゴミ箱に捨てる缶を見たりしながら、自分がどう感じるかを検証していく。大事なのは、“具体で考える”こと。そうすることで想像力が働き出しアイディアも豊富に出てくる」(高木氏)

  あくまでも具体を観察することで、“芯を食った”提供価値が生まれる。アスクルの場合は、先入観を排除し、中小企業の総務部門の具体的な要望に地道に耳を傾けたことによって、新業態を開発できたのである。

STEP 02
選択の視野を広げトレードオフを解消する

森 祐治
電通コンサルティング
ディレクター
日本電信電話、米国でのベンチャー企業創業、マイクロソフト、マッキンゼー・アンド・カンパニー、シンクを経て、現職に就任。

  ニーズの芽に気づいても、一般的なマネジメント手法では、リスクとリターンが相関するため、選択肢がトレードオフの関係に陥るという問題が発生する。しかし森祐治・電通コンサルティング ディレクターは、「前提条件に縛られず、新たな『ビジネスの生態系』を構想する力があれば、新業態のトレードオフは解消できる」という。 

 「Yahoo!BBでは加入者数を伸ばすため、無料でモデムを配ることを考えた。そのため巨額の資金を必要としたが、外部資金を調達してスピードを上げるか、自社で投資できるスピードまで下げるか、というトレードオフに直面した。結局SPC(特別目的会社)を設立して資産を証券化、リスク受容の高い投資家に販売してモデムを獲得するという資金スキームを編み出した。つまり事業リスクを金融リスクにヘッジすることでトレードオフを解消、“リスクなくスピードを上げ利益を追求する”ことを実現した」(森氏)

  金融部門にとっては目新しいアイディアではないが、事業部門にとってなかなか思いつかないソリューションである。新業態を開発するMDBDプロセスでは、このように部門の壁を越えて選択肢の視野を広げることが重要になる。

  新業態の開発では、機会を逃さず迅速に事業をローチンさせること、市場との対話のなかで改善し続けることが欠かせない。