ケース1
親と別居、兄弟姉妹が親と同居している
次男は東京に住んでいて、兄夫婦が田舎の福島で両親と同居していましたが、要介護状態だった父が82歳で亡くなったとします。こういう場合、遺言書がないと兄が遺産分割協議書を手配する場合が多いのですが、往々にして兄に有利な内容になりがちです。
同居していた兄は「介護も含めて親の面倒を見てきたのだから、財産も多めにもらって当然だ」と思っています。一方、別居していた次男は「こっちは、小さな家でも自前で高額なローンを組んで購入し、毎月支払いに追われているのに、兄は家賃も払わず大きな家に住んでいて不公平だ」と思うかもしれません。
このように、実家の親が亡くなると親と同居していた子どもは、自分に有利になるように相続手続きを進めようとする傾向があります。一方、別居していた子どもは、自分にほとんど相談もなく一方的に手続きが進められることに対して反感を持つ可能性があります。もし、あなたがこれと似たような状況なら、要注意です。
ケース2
親が小規模な事業を営んでいる
親が株式会社の経営者の場合、親が保有していた株の相続で揉めると、場合によっては会社を売却・譲渡するなど、事業体制の根幹に大きな影響を及ぼす可能性があります。この場合、誰もが納得いく人を会社の後継者に指名し、その人に会社の株式、預貯金、不動産などの資産を相続させる旨を遺言書に盛り込むことが重要です。
また、親が個人事業主の場合、第3回で説明したとおり、それを知った金融機関が親名義の口座を支払い停止にするため、従業員への給与支払いや取引先への支払いができなくなる可能性があります。
それなりの規模の会社を経営している場合、顧問弁護士や税理士がこうした事業承継に関するアドバイスを事前にしてくれると思いますが、小規模な事業の場合、事前準備が手薄になりがちなので注意が必要です。