3月以降、大震災による
緊急避難モードでの金利低下

 3月11日に起きた東日本大震災以降の日本の債券市場は、「緊急避難的」に、また「質への逃避」として、再び金利リスクテイクへの投資集中に戻るバイアスが生じた。さらに4月以降は、新年度のインカム確保も含めた債券市場の好需給が続いている。

 金利先高観測は根強いものの、今次大震災に伴う経済減速と先行き見通しの低下を受けて、再び投資家の運用姿勢が金利リスクテイクに戻り、短中期を中心とした金利低下バイアス継続が展望される。

 ただし、グローバルに循環的な景気回復トレンドが続くこと、海外では引き続き金融政策のエグジットに向けた動きが続くこと、今後の国債発行増による財政悪化や債券需給への不安も生じること、日本では金融・財政拡大のリフレ策であることを総括すれば、2010年後半にかけて生じたような10年金利1%以下の金利水準には戻りにくい。

 今後も、日銀の追加緩和観測も含め、緊急避難的な金利低下バイアスがかかるものの、海外景気やエグジットに向けた動きと共に国債増発懸念を勘案すれば、長期金利は上限(1.5%程度)、下限(1%の壁)が共に意識されるレンジ相場が続くとのシナリオを想定している。

金融緩和観測高まる日銀の
「本音」は円高回避と長期金利安定

 大震災以降、過去2ヵ月、心配された円高を回避した要因は、協調介入に加えて日米金利差にある。そして、日米金利差の背景には日米の金融政策の方向性の乖離がある。

 米国の金融政策はエグジット方向に向かうとの市場のコンセンサスが存在する一方、日本では今次大震災後の3月14日に日銀が追加的な金融緩和を行なっている。3月14日の日銀の金融緩和は、「円安政策」の観点から大変に有効であったが、政治サイドから日銀への国債直接引き受け論も生じるなか、国債買い切りオペの増額を含めて、追加的金融緩和に向かいやすい。