てるみくらぶ破綻で悲鳴噴出
予兆は見抜けなかったのか?
格安旅行会社「てるみくらぶ」が破綻した。約3万6000件、99億円分の旅行申し込みが利用不能になり、海外旅行中の2500名が現地でホテル代の支払いなど二重の出費を強いられている。これから出かけるところだった人たちは、支払った多額の旅行代金が無になるという事態に悲鳴をあげている。
破産申請の内容によれば負債額は約150億円。利用者への補償は業界団体の日本旅行業協会が1億2000万円を補償するものの、戻って来る金額は1%程度。海外旅行を楽しみにしていた消費者にとっては悲劇の結果となった。
私はダイヤモンド社の「ZAiオンライン」で「格安セレブ術」を連載している。それほどお金を使わずに優雅に暮らすことを主義とする格安術を駆使して、毎日を楽しく暮らしているつもりなのだが、ひょっとするとこのような破綻劇に巻き込まれてしまうこともあり得ると、今回は改めて考えさせられた。
実際に調べてみると、わが家でも2000年代の比較的早い時期に二度、てるみくらぶを利用して海外旅行に出かけていたことがわかった。インターネットで格安の旅行プランを検索した結果見つけて、何の疑問も抱かずに利用していたわけだ。
各社の報道を見ると、てるみくらぶが破綻するかもしれないという予兆は色々とあったという。2年前から業績を公表しなくなったとか、昨年グアムの事務所を閉じたとか、破綻の直前には旅行代金を現金で振り込めば1%引きになるなどと広告していたとか。どれも振り返って見れば予兆だったと言えるのだが、賢い消費者ならそれに気づくことができたのだろうか。
それを予兆と言うならば、たとえば誰でも知っている某ECモール大手企業も、1年半前から流通総額の公表を止めている。昨今、百貨店大手が地方の百貨店を閉じるという報道も多い。それなりに経営が苦しいからなのだが、だからと言ってそれが破綻の前兆かというとそれは違う。
あえて言えば、てるみくらぶの破綻直前に、広告でも窓口でもとにかく現金取引を促す行動をしていたという点くらいが、賢い消費者が異変に気づくことができた唯一の手がかりだったのではないかと私は思う。
これが航空会社やホテルチェーンのような大企業のてるみくらぶの取引先であれば、たとえば支払いが滞ってきたという情報も入るだろうし、東京商工リサーチなどの興信所情報を調べれば2年前に大幅な債務超過に陥っていたこともわかる。だが、一般の消費者にはそれをチェックするのは無理だ。
そのような状況の中で我々は、日常的に格安のサービスを使っている。いつかお金を支払った相手が破綻するリスクは常に抱えながら、大きな落とし穴の縁を歩いているのに気づかず、安さを楽しんでいるというのが実態かもしれない。そこで、私自身を振り返って実際にどんなリスクを踏んでいるのか、確認してみることにした。