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石黒不二代の勝手に改革提言!ニッポン人の新しい働き方

「モラルの高さ」だけで片付けてよいのか
震災危機でも“組織”で行動する日本人と世界との違い

石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]
【最終回】 2011年5月23日
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「モラルの高さ」を賞賛された日本人
しかし、“全体主義”的な行動に疑問も

 大震災に見舞われながらも冷静さを失わず、落ち着いて行動した日本人のモラルの高さが海外各国で賞賛された。震災直後の混迷のなかでも、コンビニでいつもどおりに商品を購入し、電車のホームで列をつくって並ぶ。こうした日本人の秩序ある行動は、他国からすれば真似できない部分だろう。私も当時、震災という有事に発揮された日本人の意識の高さを誇らしく思ったし、その思いは、今でも変わらない。

 しかし、同時に、全体と異なる行動をとる人たちを批判するという言動も目に付いた。大方針があれば受容し、あえてリスクに『慣れていく』ように時間が経過していった。これは、個人を尊ぶ欧米とは異なる行動だと思う。

 福島原発事故発生に伴い、首都圏にオフィスを持つ外資系企業や外国人が早々に関西方面や海外へ引き上げた。私も海外の友人から「今すぐ、逃げてくれ」とのメールが毎日のように届いた。それは彼らの多くが自分や家族の生命に最も価値を置いているからだと思う。簡単に言えば、命さえあれば何とかなる、後のことは後で考えよう、である。そして、その命を守るか否かは、個人の判断にゆだねられている。世界に目を向ければ、人種・宗教・文化が異なり、人々は異なる価値観を持っている。それぞれの価値観をもとに彼らは、個人という単位で行動している。

 一方で、日本人の多くは東京を離れず、努めて通常通りに仕事を行おうとしていた。それは、「仕事を継続する」ことに最も価値を置いたもので、上と対比すれば、命よりも仕事を優先させているとも言える。もちろん、当時の情報は錯綜していたから、命をおろそかにしていいと思ったわけではないだろうが、対照的であることは間違いない。最初は絶賛していた海外のメディアも、「勤勉」という言葉で飾るにはあまりにも“奇異な状態”と報道したものもあった。

 私は、経営者として「業務の継続」は必須であると思っている。しかし、日本人のほぼ全員が業務の継続を粛々と行う行動の背景には「モラルの高さ」だけではない、それ以外の理由があるようにも思う。「全体主義」と言っては言いすぎだろうか。

 実際に今回の震災後、放射能などの恐怖から逃れるために日本人が海外へ避難しようものなら、周囲から非難されかねない空気が充満していた。一部に自主的な人もいる一方で、このようにほぼ全員が同じ秩序を守る背景には、秩序からはずれてしまった場合に非難されるのではないかと考え、人の目を気にする人が少なくなかったのではないか。

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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。

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少子高齢化、グローバル化が進行し、経済は低成長下にある日本。環境が大きく変わった今、我々日本人は以前と同じような働き方をしていては、安定した生活さえもままならない。この連載では、ネットイヤーグループ石黒不二代社長をナビゲーターに様々な切り口から新しい時代に相応しい日本人の働き方を探る。

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