道の駅は2016年5月現在、全国に1093駅あるが、経営不振で赤字を出しているところも少なくない

要約者レビュー

 ゆるキャラ、地域ブランド、「道の駅」など、地域活性化に向けた取り組みには様々なものがある。だが、多額の税金が使われているにもかかわらず、そうした地域活性化事業の多くは成果をあげていないと著者は断言する。

『地方創生大全』
木下 斉
304ページ
東洋経済新報社
1500円(税別)

 本書『地方創生大全』は、(1)ネタの選び方、(2)モノの使い方、(3)ヒトのとらえ方、(4)カネの流れの見方、(5)組織の活かし方という5つの観点から、地域活性化事業における問題点と解決策を提示している。成功事例だけでなく、失敗事例についても取りあげられているため、どのような視点を持ち、どのような姿勢で取り組めばよいのか、多角的な視点から理解を深められるだろう。

 また、著者は地方再生・活性化の問題を、「日本のいたるところで発生している構造問題のひとつ」と位置づけている。つまり、地方再生・活性化事業の問題解決について考えることは、企業や業界団体、自治体などがかかえている構造的な問題を考えることにもつながるというわけである。地方創生の現場で起きている問題は、けっして他人事ではない。

 地域活性化事業に自ら投資し、地域の人と共に経営をしながら取り組む「まちビジネス事業家」の著者だからこそ、組織づくりや組織運営についての解説には説得力がある。地方活性化に関わる方にはもちろんのこと、ビジネスの現場に携わる方であればぜひ読んでいただきたい、魂のこもった一冊だといえよう。 (河原 レイカ)

本書の要点

・地域活性化の先進地域で行われている取り組みを、そのまま自分たちの地域で導入しようとしても失敗するだけである。
・地方だからこそ、他の地域と異なることに取り組んで需要を開拓していくべきだ。そのためには成果重視の評価制度を導入し、新たな取り組みを推奨するべきである。
・都市から地方へ人口を移動させるという発想では、地域活性化には結びつかない。
・地域活性化のために必要なのは、短期的なカネではなく、継続的に稼げる仕組みだ。
・地域の人が自ら考え、実践し、失敗から学んで再挑戦することで、はじめて地域の課題を解決しうる知恵は生まれる。