東日本大震災以降、日本の雇用環境は大きく変わりました。被災地の産業が大打撃を受けたのはもちろんですが、被災地やその周辺地域はオンリーワンの技術を持った製造業の集積地だったため、こうした工場をサプライチェーンの一環に組み込んでいた産業は、玉突きのかたちで間接的な被害を被りました。
企業規模の大小を問わず、製造業に従事する経営者というのは、常にグローバル市場のなかの最適配置を考えています。震災によってサプライチェーンが滞った場合、事業の継続性の確保から、日本国内での生産を諦めることも厭いません。被災地の復興を待たずして、いわゆる“日本外し”が進行すれば、被災地の産業基盤が消失し、雇用面で甚大な被害が出るのは必至です。
震災からおよそ2ヵ月半が過ぎましたが、これから国内の雇用は本格的に悪化することが考えられます。一時的には、震災直後に稼働率を落としていた工場が息を吹き返し、津波で流された40万台とも言われる車の買い替え需要が起き、一部で人材の需要が逼迫する局面もあるかもしれませんが、中長期的にはやはり悲観的にならざるを得ません。
被災地・非被災地を問わず、失業の嵐が吹き荒れるでしょう。すでに「震災解雇」は始まっています。「工場が普及したらまた雇うから、失業保険で食いつないでくれ」と言われて解雇されたケースは、被災地にゴロゴロしています。果たしてそうした口約束は守られるでしょうか。
「震災後、電車が動いていなくて出勤できなかったために、勤務態度にケチをつけられ、退職を迫られた」「店舗で義援金の募集の仕事をさせられたが、『思ったほど募金額を集められていない』と叱責され、解雇をほのめかされた」など、“便乗解雇”としか考えられないケースも聞こえてきます。これから先、電力不足に拍車がかかれば、さらなる解雇の動きが出てくる可能性があります。
新卒学生の就職も悲惨を極めています。大学卒業生の就職内定率は91.1%と過去最悪となりました。バブル崩壊後の93年~04年頃の就職難を彷彿とさせる“第二の氷河期世代”が誕生する懸念は十分あります。