全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!

セックスと睡眠の意外な関係

寝室は眠るための部屋とはいえ、夜の営みという大事な目的のための部屋でもあるというのはみなさんもご承知のとおりだ。オーガズムに達すると、人は穏やかで満ち足りた気持ちになる。男性も女性も、オーガズムを迎えているあいだ、オキシトシン、セロトニン、ノルエピネフリン、バソプレシン、プロラクチンといったホルモンが分泌されるという。

こんな説明がなくても、経験すればわかる話だ。オーガズムに達すると眠くなることは、たいていの人が知っている。だが、このメリットを実際に活用しているかというと、必ずしもそうとは言えないのではないか。この記事では、オーガズムによって分泌されるホルモンについて学び、セックスをするとぐっすり眠れる理由をしっかりと理解してもらいたい。

オーガズムが生みだす快眠ホルモン「オキシトシン」とは

オキシトシンには、ラブホルモンや抱擁ホルモンという俗称がある。ハグやボディタッチ、そしてもちろんセックスといった親密な行為をすると、相手とのあいだに心のつながりが生まれる。オキシトシンはオーガズムによって増える。学術誌『レギュラトリー・ペプチド』によると、オキシトシンには心を鎮める作用があるので、コルチゾールの働きを抑制し睡眠を促す効果をもたらすという。

オキシトシンは通常、視床下部で生成されて下垂体に保存される。主要な腺や臓器と密接につながっているため、オキシトシンの分泌が契機となって、気分を高めるもう一つのホルモンであるエンドルフィンの分泌などの作用が体内に生まれる。オキシトシンやエンドルフィンが分泌されれば、健やかな眠りにつく準備は整ったも同然だ。ところで、エンドルフィンの語源はご存じだろうか。この言葉は、内部に生じるという意味の「endogenous」と、ギリシャ神話で眠りの神とされるモルフェウスから派生した「morphine(モルヒネ)」という二つの言葉から生まれた。

快眠がセックスの質を高める

セックスが快眠をもたらすのはわかった。ところが最近の調査によると、快眠もまたセックスの質を高めてくれるという。

『ジャーナル・オブ・セクシャル・メディスン』誌によると、睡眠を適切にとっている女性のほうが性的欲求が強く、行為中の興奮の度合いも強いという。また、ぐっすり眠った翌日は、性行為に及ぶ確率が14パーセント高いことも明らかになった。大切な女性がいる人は、絶対にこの事実を覚えておいてほしい。愛する女性に健康かつ幸せでいてほしいなら、彼女がぐっすり眠るためにできることを確実にやってもらいたい。

睡眠不足になると、男女を問わず性欲の減退や性機能の低下を招く。ここで重要な役割を果たすのが、テストステロンと呼ばれるホルモンだ。学術誌『ブレイン・リサーチ』に掲載されていたデータで、睡眠不足は男性におけるテストステロンの減少につながることが明らかにされている。テストステロンが減ると、皮下脂肪の増加や気分の落ち込みをはじめ、勃起障害まで起こりかねない。

ミネアポリスにあるミネソタ大学メディカル・スクールで泌尿器外科の教授を務めるジョン・L・プライヤーは、「睡眠不足は勃起障害のリスクを高める恐れがある」と語る。睡眠不足になれば、テストステロンレベルが急激に下がるからだ。さらに恐ろしいことに、性的欲求も低くなるため、機能障害になっていると気づかないこともあるという。

性機能を健全に保ちたいなら、睡眠の改善が絶対に必要だ。やる気、エネルギー、欲求を取り戻す力が睡眠にあるにもかかわらず、人はついそのことに気づかないふりをしてしまう。睡眠が不足すると何もかもが急激に悪くなるが、それは裏を返せば、良質な睡眠をしっかりととれば、何もかもが急激によくなるということだ。

セックスとオーガズムは、睡眠に限らず実にさまざまなメリットをもたらしてくれる。免疫力が高まり、気分の落ち込みが緩和されるほか、寿命が延びる一助にもなる。オーガズムを与えあうことのできる能力は、健康と幸せに深く結びついているのだ。

これほどの効果がある理由について、いま一度はっきりさせておこう。私たちの身体における最大の性器は何か。答えは脳だ(大きさは関係ないと主張している人には朗報だろう)。脳がなければ、性的興奮は得られない。充実したセックスライフと最高の睡眠を得るためには、脳と身体のつながりを高めることが不可欠なのだ。だから、分別をもって楽しむことを忘れずに、最高の快感がもたらしてくれるメリットを満喫してほしい。