だらだらと続く長い会議、問題解決に至らない議論、出口のないブレーンストーミング、無数のメールに返信するだけで終わってしまう空き時間……。組織で働いていれば、よくある1日かもしれない。だがこんな日がつづくと、どんなプロジェクトも前に進まない。特に組織の総意を重んじる日本の企業では、いいアイデアを前にしても決断のタイミングを逸してしまうことが多々ある。
そんな状況を「たった5日間」で打開できてしまう黄金メソッドがあるという。米グーグルの投資部門、GV(グーグル・ベンチャーズ)が数々のスタートアップで実証してきたメソッド、その名も「スプリント(短距離走/全力疾走)」だ。(文=田坂苑子)
シリコンバレーの新興企業が次々と取り入れている
「速く回す仕事術」スプリントって?
スプリントはグーグルで生まれ、GmailやChrome、グーグルサーチ等の開発にも使われた革新的な開発プロセスだ。GVではそのメソッドをさらにブラッシュアップし、のべ100回以上のスタートアップでスプリントを行ない、大きな成果をあげている。
それだけでもすごい数だが、スプリントを独自に導入し、さまざまな問題解決を図っている組織の数はそれ以上だ。今では、Facebookやマッキンゼー・アンド・カンパニー、Airbnbなどの有名企業だけでなく、コロンビア大学などの教育現場の他、政府機関や非営利団体でも取り入れられているという。
このメソッドを、今すぐに、世界の誰もが実践できるよう、グーグル、GVでスプリントを磨き上げてきたジェイク・ナップらがまとめた本が、『SPRINT 最速仕事術』だ。
スプリントの仕組み
スプリントは、月曜から金曜までのたった5日間で、問題の洗い出しからアイデア出し、プロトタイプの制作、そしてユーザーテストまで行ない、最大の成果を生み出す開発プロセスだ。事業戦略やイノベーション、行動科学、デザイン思考などで使われる手法を組み合わせ、どんなプロジェクトにも活用できる段階的プロセスにパッケージされている。
まず、スプリントは7人以下のチームで行なう。決定権を持つ人間を1人、それ以外はそれぞれ必要な専門分野からエキスパートを選ぶ。そして、5日間連続で行なえるスケジュールと場所を確保する。その5日間、スプリントを行なっている時間帯はメール等は一切禁止。デバイスの持ち込みも禁止だ。
上記の条件が整ったら、本書の流れに沿って、「何が問題か、問題をどうすればいいか」を洗い出す月曜日から、アイデア出しをする火曜日、ベストのソリューションを決定し、内容を詰める水曜日、試作品(プロトタイプ)を作る木曜日、そしてユーザーテストをする金曜日……と進めていく。