グーグルで開発された究極のスピード仕事術「SPRINT」。グーグルとGV(グーグル・ベンチャーズ)が成功を生んできたその超合理的なノウハウを、開発者自身が手取り足取り公開した話題の新刊『SPRINT 最速仕事術』。世界で衝撃をもって迎えられ、23ヵ国で刊行の世界的ベストセラーとなっている。本連載では、仕事を「最速化」し、大きな成果を出し続けるそのノウハウについて徹底的に迫る。第1回は日本版の訳者あとがきから、その内容を紹介する。
「スプリント」の驚くべき威力
スプリントとは、たった5日間で本当に重要な問題を見きわめ、それに確実に答えを出す、迅速な学習と検証のプロセスである。スプリントを行えば、未来へタイムワープして、巨額の投資を実施する前に、アイデアが成功するか失敗するかをいますぐ見きわめられる。なぜそんなことができるのか?
その秘密は、「デザイン」を問題解決のツールとして活用する点にある。デザインは、製品・サービスと顧客との接点である。スプリントではデザインを通して最も大切なビジョンを製品やサービスのかたちに具現化し、それを実際の顧客にテストしてもらうことで、未来のマーケットを垣間見ることができるというわけだ。
スプリントは、具体的には事業戦略やイノベーション、行動科学、デザイン思考などの手法のなかから、一番効果の高いものだけを選り抜いた「ベストヒット」集を、段階的プロセスのかたちにパッケージして、どんなチームにもすぐに活用できるようにしたものだ。
ビジネス書を読んで、理論はわかっても「どう実践しようか?」と途方に暮れることはないだろうか?
この本では、そんな心配はない。小難しい能書きはいっさい抜きで、いますぐ誰にでも実践できる方法やノウハウを、細かいところまでわかりやすく説明している。イノベーションをものにするには、天才である必要はまったくなく、迅速な学習能力がカギになる。誰にでも革新を可能にする5日間のプロセス、それがスプリントなのだ。
グーグルで開発された超合理的な方法
スプリントは、著者の一人ジェイク・ナップ氏がグーグルで開発し、のちにGV(旧グーグル・ベンチャーズ)にて、スタートアップ向けに改良を加えたプロセスだ。GVはグーグルのベンチャーキャピタル部門から独立した会社で、世界で最も活発で成功しているコーポレート・ベンチャーキャピタルの一つである。
GVのユニークなところは、ただ資金を提供するだけでなく、「パートナー」と呼ばれる世界級のデザイナー、リサーチャー、エンジニア、マーケター等のオールスターチームが、専門知識やスキルを惜しみなく活用して、投資先の選定・育成・運営に積極的に携わっている点にある。
なかでもとくに重視されているのがデザインだ。著者の3人を中心とする「デザインパートナー」が、スタートアップのチームと一緒にスプリントを行い、デザインを通して支援を提供していることが、GVの強みの一つとなっている。